Fuzzy sphere regularization は、3d CFT を 上の有限サイズ量子多体系として調べる方法である。Radial quantization では 3d CFT の局所演算子が 上の状態に対応するので、有限サイズ Hamiltonian の spectrum、matrix element、correlator から conformal data を抽出できる。
問題は、 上で自由度を有限個に減らしながら回転対称性を壊さない cutoff をどう作るかである。Spherical lowest Landau level はそのための一粒子空間を与える。この空間の上に対称性を保つ many-body Hamiltonian を置き、critical point に tune すると、対応する 3d CFT の spectrum や matrix element を調べられる。
以下では、まずこの一般的な構成を説明し、その後は 3d Ising CFT を具体例に固定する。Ising の fuzzy-sphere Hamiltonian で spectrum を同定し、その同じ有限サイズ Hilbert space から OPE coefficients、four-point correlator、defect CFT data へ進む。
1. Spherical Landau Levels
fuzzy sphere regularization の入口は、球面上の lowest Landau level (LLL) を有限次元の一粒子 Hilbert space として使うことにある。ここがわかると、「fuzzy sphere は格子化ではない」「有限サイズでも が保たれる」「orbital 数 が cutoff になる」という説明が一つにつながる。
Landau level cutoff
まず平面の Landau level を思い出す。2次元平面上の荷電粒子を一様磁場中に置くと、運動エネルギーのスペクトルは離散的な Landau level に分かれる。各 Landau level は大きな縮退を持つ。
直観的には、強い磁場によって cyclotron motion が高いエネルギーに押し上げられ、低エネルギーでは guiding center の自由度だけが残る。
fuzzy sphere で使うのは、この球面版である。
球面 上で一様磁場を作るには、球の中心に磁気単極子を置く。球面を貫く磁束を
と書く。ここで は半整数で、Dirac quantization により
となる。
この背景磁場中の荷電粒子の一粒子固有状態が、球面 Landau levels を作る。平面 Landau level と違って、球面は有限体積なので、各 Landau level の縮退度も有限になる。
最低 Landau level の縮退度は
この が fuzzy sphere 文献でよく出てくる orbital 数である。
LLL の状態は
でラベルできる。これは角運動量 の multiplet と同じ個数で、実際に LLL は の spin- 表現をなす。
ここが重要で、 は「球面上の格子点番号」ではない。 個の orbital は有限個の自由度として使えるが、その全体が回転対称性の既約表現として変換する。
普通の格子正則化では、球面や平面を点の集合に置き換える。そのため連続回転対称性は有限サイズで壊れ、熱力学極限で回復することを期待する。球面 Landau level cutoff は違う。有限個の LLL orbital を残しても、それらは最初から 表現になっている。したがって有限サイズでも回転対称性を厳密に保てる。
fuzzy sphere が 3d CFT に向いている理由の一つはこれである。radial quantization では CFT を 上の Hamiltonian 問題に変換するので、球面上の回転対称性 は CFT operator の spin と直接対応する。
Wavefunctions
球面 Landau level の一粒子波動関数は、monopole background に合わせた球面調和関数、つまり monopole harmonics で書かれる。記号はいくつか流儀があるが、典型的には
のように書く。ここで は monopole charge、 は全角運動量、 はその 成分である。ここでの は monopole charge に対応する。
monopole charge がない通常の球面調和関数では
である。monopole charge が の sector では、最小の角運動量が ではなく になる。Landau level index を とすると、
したがって 番目の Landau level の縮退度は
特に LLL は なので
となり、縮退度は になる。
LLL の波動関数は、球面の spinor coordinates
を使うと見通しがよい。これは通常の一価な球面関数としての表示ではなく、monopole gauge を選んだときの局所的な波動関数表示だと思うのがよい。規格化を除けば、LLL basis は
指数 と は非負整数で、その和は常に
である。つまり LLL は、 の次数 の同次多項式全体として見られる。この空間の次元は
で、spin- 表現そのものになっている。
ただし、 と は で
と変わる。したがって は全次数 のため、同じ変換で を拾う。 が奇数なら、この patch 表示の波動関数は符号が変わる。
これは矛盾ではない。monopole background では、波動関数を全球面上の普通の一価関数として扱うのではなく、gauge の貼り合わせ込みで扱う。物理的に必要なのは、patch 間の gauge transformation まで含めて一貫していることであり、その条件が という flux quantization と対応する。
この書き方では、 の状態は 、 の状態は である。これらはそれぞれ北極・南極付近に重みを持つ。中間の は緯度方向に分布する。ただし、これらは厳密な位置固有状態ではない。 basis は を対角化する便利な基底であり、「格子点」ではない。
この holomorphic な同次多項式表示は LLL に特有である。高い Landau level では
となるので、同じ monopole charge のもとで、角運動量だけが大きくなる。その波動関数は単に の次数 の同次多項式では書けず、 も含む monopole harmonics として現れる。
したがって、monopole harmonics 全体は
でラベルされるが、fuzzy sphere regularization でまず残す一粒子空間は、そのうち
の LLL multiplet だけである。LLL が特別に扱いやすいのは、この部分だけが の holomorphic 同次多項式として閉じるからである。
Monopole harmonics
普通の球面調和関数 は、monopole charge がない sector の角運動量固有関数である。monopole harmonics はその自然な拡張で、 に戻すと通常の球面調和関数になる。
という関係だと思えばよい。
monopole がない場合、波動関数は球面上の通常の scalar function であり、 がその基底になる。monopole がある場合、荷電粒子の波動関数は gauge field に結合しているため、単一の全球的一価関数として書けるとは限らない。実際には gauge patch ごとの表示と、その重なりでの gauge transformation を合わせて考える。そのため微分演算子も普通の微分ではなく gauge-covariant derivative になる。
対応して、角運動量も素朴な orbital angular momentum
だけではなく、gauge field の寄与を含む conserved angular momentum を使う。半径 、単位電荷、monopole flux という規約では、covariant derivative を
として、conserved angular momentum は典型的に
と書ける。符号は電荷と monopole charge の規約で入れ替わるが、gauge potential を含む微分と、monopole charge に比例する radial term が一緒に入る点は変わらない。この は
を満たし、monopole harmonics は の同時固有関数になる。
LLL の spinor-coordinate 表示では、角運動量生成子は についての微分作用素
で与えられる。
これらの作用は の次数 の同次多項式全体を保つ。この表示を使うと、LLL basis が spin- multiplet であることはそのまま計算で見える。LLL は の次数 の同次多項式空間
として作れる。上の生成子を作用させると
かつ は を だけ動かす。端では 、 なので、次数 の空間は spin- 表現として閉じる。Casimir はこの空間上で
を与える。monopole harmonics の言葉では、これが LLL の に対応する。
この違いのため、monopole がある場合には からではなく、 から始まる。これが LLL の縮退度 の直接の理由である。
fuzzy sphere で使う cutoff は、通常の scalar function の展開
を角運動量でそのまま切るものではない。monopole charge の sector に移り、その中の LLL
を一粒子 Hilbert space として残す。この意味で、通常の球面調和関数との関係は「同じ 表現論を使うが、背景 gauge flux が入った sector を使っている」と言うのが一番正確である。
LLL projection
ここまでで見たのは一粒子問題である。full Hilbert space には LLL だけでなく、高い Landau level も含まれるため、全体としてはまだ無限次元である。一方、各 Landau level は有限縮退を持ち、それ自体が multiplet になっている。したがって、 を保った有限自由度の regulator を作るには、Landau level を有限個だけ残せばよい。fuzzy sphere regularization では、その最小の選択として LLL だけを残す。
この時点で、一粒子 Hilbert space は
と置き換わる。多体系では、この有限個の orbital に粒子や flavor を入れて many-body Hilbert space を作る。
もし背後に full Hilbert space の Hamiltonian があり、それを低エネルギー部分へ落とすと考えるなら、LLL 内に残る最初の項は
である。これは「LLL の中で始まり、LLL の中で終わる成分だけを残す」という意味での projected Hamiltonian である。
有限の Landau level gap では、高い Landau level への混合は相互作用の強さに応じて摂動的に残る。最初の補正として next Landau level の寄与を含めるなら、LLL と next Landau level の energy separation を とおいて、摂動展開として
のような補正が出る。これは LLL から next Landau level に一度出て戻る virtual process が、 で抑えられるという見方である。LLL の有効理論では、相互作用係数のずれや、もともと書いていなかった多体相互作用として現れる。量子 Hall 系で Landau level mixing を低エネルギー有効 Hamiltonian に押し込む見方と同じ種類の話である。
fuzzy sphere の実際の model building では、full Hamiltonian から射影計算を始めるというより、LLL orbital 上に や内部対称性を保つ Hamiltonian を直接定義することが多い。目的は microscopic Hamiltonian そのものではなく、tune した先の IR critical theory である。だから、高い Landau level を積分して得られる細かい相互作用を第一原理的に全部決めることよりも、LLL 上の相互作用を選び、相図の中で目的の critical point に tune することが中心になる。
Fuzzy sphere
普通の球面では、座標は可換な関数
である。これらは球面上の点を指定する classical coordinates であり、
である。
LLL に制限した後は、同じ座標関数を LLL Hilbert space 上の演算子にする。つまり
を考える。 で挟むので、 は の有限次元行列になる。
この射影後の座標は、もとの のようには可換でない。LLL は spin- 表現なので、射影後の座標は角運動量行列と同じ構造を持ち、規格化を除けば
のように振る舞う。したがって
となる。有限の では座標が非可換な行列になり、 で右辺が小さくなって可換な球面座標に戻る。
この非可換性が短距離 cutoff を与える。つまり fuzzy sphere は、球面を小さい plaquette に分割するのではなく、座標関数の代数を有限次元行列で近似する。
この意味で「fuzzy」である。
ここまでの構成では、LLL 後の一粒子 Hilbert space は結局
なので、はじめから spin- 表現で考えてもよいように見える。一粒子空間だけを抽象化すれば、それはほぼ正しい。
ただし、monopole sphere から構成すると、その spin- 表現に幾何学的な意味が付く。これは内部 spin ではなく、球面上の orbital space であり、 は座標演算子 を作るための generator になる。
多体系でもこの幾何学的な由来が効く。単に 個の状態があるだけでは、どの相互作用が球面上で自然なのかが見えにくい。LLL on sphere として構成すると、density operator、relative angular momentum、pseudopotential などを使って、球面上の局所的な相互作用を LLL に射影したものとして Hamiltonian を設計できる。
つまり、monopole background 上の Landau level construction は、目的の CFT が物理的な背景磁場を持つという意味ではない。spin- 表現を、球面上の空間自由度の正則化として使うための幾何学的実現である。
3d CFT への接続
radial quantization では、3d CFT の空間は 、時間は である。
したがって、球面上に有限 Hilbert space を作り、そこに相互作用 Hamiltonian を置き、臨界点に tune できれば、CFT の spectrum を数値的に抽出できる。
このとき球面 Landau level は次の役割を果たす。
- 上の自由度を有限個の orbital に落とす。
- finite size でも を保つ。
- LLL projection により UV cutoff を入れる。
- を大きくしながら、低エネルギーデータを外挿する。
ただし、 を変えると monopole charge も LLL Hilbert space も変わる。したがって「同じ microscopic theory の cutoff を細かくする」というより、 ごとに定義された Hamiltonian の列
を tune し、IR data が同じ CFT に近づくかを確認する、という理解が近い。同じ理論かどうかは、microscopic interaction が文字通り同じかではなく、scaling dimensions や OPE coefficients などの universal quantities が同じ極限に向かうかで判断する。
Notation
| Term | Meaning |
|---|---|
| monopole flux | 球面を貫く磁束。 と書く。 |
| flux を決める半整数。同時に LLL orbital が作る spin 表現の値。 | |
| LLL | lowest Landau level。fuzzy sphere で残す一粒子空間。 |
| LLL の orbital 数。 | |
| orbital | LLL の基底状態。格子点ではなく multiplet の成分。 |
| monopole harmonics | monopole background 中の球面上の一粒子固有関数。普通の の monopole あり版。 |
| spinor coordinates | , 。LLL 波動関数を gauge patch で同次多項式として書くのに便利。 |
| pseudopotential | LLL 上の二体相互作用を relative angular momentum channel ごとに指定する量。 |
| LLL projection | 高い Landau level を捨て、有限次元 Hilbert space に制限する操作。 |
| fuzzy | LLL 射影後に座標が非可換な有限次元行列になること。 |
2. LLL Hamiltonian
LLL Hilbert space を得ただけでは、まだ many-body model は決まらない。次に必要なのは、その有限個の orbital 上で許される Hamiltonian terms を書くことである。
Hamiltonian の指定
LLL の一粒子空間は
でラベルされる 個の orbital で張られる。many-body problem では、この orbital に粒子を入れるので、creation/annihilation operators
を使って Hamiltonian を書く。
一体項の係数行列を と書く。これは一粒子 Hamiltonian を LLL orbital basis で見た行列要素で、
と書くと、最も一般的な一体項は
である。二体項までで打ち切って考えるなら、二粒子 Hilbert space 上の operator の行列要素を として、一般の二体項は、規格化や反交換符号の流儀を除けば、
の形を取る。一般には三体以上の項もありうる。
したがって、Hamiltonian を二体相互作用までで作る段階の問題は、
をどう選ぶかである。ここではまず二体項までに限る。
ただし、fuzzy sphere では適当に行列要素を選ぶわけではない。LLL orbital は spin- 表現なので、球面の回転対称性 を保つように や を制限する。ここが格子模型の「近接サイトに相互作用を書く」発想と違う。
One-body terms
もし一種類の粒子だけを考え、full を保つなら、一体項は spin- multiplet の中で scalar でなければならない。Schur’s lemma 的に言えば、既約表現の中で回転と可換な operator は単位行列に比例する。
つまり
しか許されない。
この項は
であり、粒子数 が固定されている sector では定数にすぎない。
したがって、単一 species かつ固定粒子数で二体項までに限るなら、次に調べるべき非自明な部分は二体相互作用である。
複数 flavor や追加の内部自由度がある場合、一体項にも非自明な構造が入りうる。ただし、ここでは単一の spin- LLL multiplet に対して が何を制限するかを調べる。
Two-body channels
二体状態は、二つの spin- orbital を合成したものなので、表現論としては
に分解される。
二粒子 sector の basis vector は
のようにラベルできる。ここで は、一つ目の粒子が spin- multiplet の 成分にあることを表す。identical boson / fermion では、実際には適切に対称化または反対称化された二粒子 sector を使う。
回転対称性を使うには total angular momentum basis
を使う方が自然である。両者は Clebsch-Gordan coefficient で結ばれる。
ここで は、二つの spin- 表現の product state を total angular momentum に合成する Clebsch-Gordan coefficient である。
二粒子 sector 上で、total angular momentum の部分空間への projector を
と定義する。
orbital labels で表すと、この projector の行列要素は
で与えられる。実際の second-quantized Hamiltonian では、この projector の行列要素が の構成要素になる。
回転不変な二体相互作用は、 に依存せず、total channel ごとの係数だけで指定できる。つまり二粒子 sector 上の interaction kernel は
と書ける。ここで がその channel の相互作用強度である。このように二体相互作用を angular momentum channel ごとに指定する係数の集合を、量子 Hall や fuzzy sphere の文脈では Haldane pseudopotential、または単に pseudopotential と呼ぶ。
この の matrix element を second-quantized form に持ち上げると、前に書いた を持つ二体 Hamiltonian になる。
Pseudopotentials
Pseudopotential は、real-space potential を LLL に射影した後の二体相互作用を channel ごとに並べたものである。局所性は、この係数列のパターンとして現れる。
平面上の短距離相互作用なら、二粒子が近い配置に大きなエネルギーを与える。LLL では「二粒子が近い」という情報は relative angular momentum channel に翻訳される。relative angular momentum が小さい channel ほど、二粒子が近づく成分を多く含む。
したがって、短距離 repulsion は低い channel の pseudopotential を大きくする形で表される。例えば contact-like な相互作用なら、最小の channel だけ、または少数の低い channel だけを強く penalize する、という見方になる。
球面では relative angular momentum を total angular momentum から
と定義する。したがって低い は大きい total に対応する。 と書かれている場合は、同じ channel を total- 表示で と表せる。
したがって、pseudopotential は局所性そのものではないが、局所的・短距離的な相互作用が LLL 射影後にどの relative channel を penalize するかを表す。
Density operators
density-density 型の相互作用を書きたいときは、number density の spherical harmonic component を使うと便利である。
LLL には sharp な位置基底がないので、点 での密度は overcomplete な LLL coherent state を使って定義する。ここで は、spin- multiplet の最高ウェイト状態を回転して、向き に局在させた状態である。
LLL orbital を でラベルし、
と書くと、coherent-state density probe は
の形を持つ。これは正規直交な位置基底での点密度ではなく、LLL に射影された smeared な density probe である。
その spherical harmonic component を
と定義すると、
となる。ここで
である。これは、関数 を掛ける一体 operator を LLL orbital basis に制限した行列要素である。表現論的には、固定した に対する は rank- tensor operator として変換する。
density-density 型の相互作用を scalar にするには、この rank- tensor の 成分を縮約する。例えば
のように書ける。 は number-density の angular momentum component ごとの結合であり、 に依存させないことで回転対称性を保つ。 は normal ordering で、ここでは二体項を定義するために一体の自己項を分けている。
この density-density 型の表示は、二体相互作用を covariant に書く別の方法である。
Ising への接続
Hamiltonian の構成で最初に扱う具体例は 3d Ising fuzzy sphere である。目的は microscopic Hamiltonian そのものではなく、対称性を持つ有限サイズ Hamiltonian の列
を作り、パラメータを tune した先の低エネルギー spectrum が 3d Ising CFT の conformal spectrum に近づくかである。
そのため、Hamiltonian を構成するときに確認すべき点は次の三つである。
第一に、どの自由度を使うか。つまり orbital 数 、particle number、flavor、fermion/boson の区別である。
第二に、どの対称性を保つか。少なくとも fuzzy sphere の利点である は保つ。3d Ising CFT を目標にする場合は、CFT の基本対称性である が microscopic Hamiltonian でどう実現されているかも確認する。その他の model-specific な対称性は、具体的な Ising Hamiltonian のところで扱う。
第三に、どの interaction parameters を tune するか。CFT では relevant operator による perturbation を調整して critical point に行く。fuzzy sphere では、microscopic interaction の係数を調整して、低エネルギー spectrum が CFT data に合う点を探す。
Notation
| Term | Meaning |
|---|---|
| orbital basis | LLL の でラベルされた一粒子基底。実装に近い。 |
| creation operator | orbital に粒子を作る operator 。 |
| two-body matrix element | 。二体相互作用を orbital basis で指定する係数。 |
| total angular momentum channel | 二粒子状態を に分解したときの sector。 |
| projector | 二粒子 total angular momentum sector への射影 operator。 |
| pseudopotential | 二体相互作用を angular momentum channel ごとに指定する係数。局所性そのものではなく、射影後の相互作用の整理方法。 |
| number-density operator | 粒子数密度の spherical harmonic component を LLL に射影した operator。 |
| tuning parameter | microscopic Hamiltonian の係数。critical point へ近づけるために調整する。 |
3. 3d Ising spectrum
ここからは、一般的な cutoff の話を離れ、Zhu et al. (2023) の 3d Ising 実装に話を絞る。
Zhu et al. (2023) は、連続回転対称性を保った有限サイズの量子多体系から 3d Ising CFT の operator spectrum を抽出する。
CFT の spectrum data が、fuzzy sphere の有限サイズ Hamiltonian 問題でどう現れるかを整理する。regulator の構成だけでは、、energy gap、 sector が何のためのラベルなのかが見えにくい。
CFT での形
3d CFT では、局所演算子が理論の基本データを担う。代表的なデータは、scaling dimension、spin、対称性での変換性、OPE coefficient などである。ここで使うのは、そのうち spectrum に関係する部分である。
state-operator correspondence を使うと、平坦空間の原点に挿入した局所演算子は、 上の状態に対応する。ここで は radial quantization の時間方向であり、 は原点を囲む球面である。
この対応により、CFT 演算子の scaling dimension は、球面上の Hamiltonian のエネルギーに対応する。球面半径を とすると、
となる。 は、無次元量である を、半径 の球面上のエネルギーに直すための次元換算である。 の規約では、単に と書ける。
同じ対応で、CFT 演算子の spin は、対応する球面上の状態がどの 表現に属するかとして現れる。したがって、球面上の状態を全角運動量 で分類できれば、それを CFT 演算子の spin と比べられる。
Ising 自由度
Zhu et al. (2023) では、LLL 上に二成分 fermion を置く。この二成分は、monopole の Zeeman field と結合する物理スピンではなく、Ising 自由度を作るための pseudospin と考える。各 Landau orbital に
を置く。
この模型では、二成分を含めた LLL 全体の半分を埋める。軌道は 個、pseudospin は の二成分なので、一粒子状態は全部で 個ある。そのうち
個の fermion を入れる。つまり、LLL orbital 数と同じ数の fermion を入れるが、各 fermion は のどちらかを取れる。
この条件を置くと、強磁性的な極限で
という二つの状態が自然に出る。どちらも「全 orbital を一つの pseudospin 成分でちょうど埋める」状態であり、 変換で互いに入れ替わる。このため、charge の総数を固定したまま、 の向きだけを Ising order parameter として扱える。
以後の spectrum analysis では、この半充填の固定粒子数空間で低エネルギー状態を調べる。つまり、total charge は固定し、 の偏りを Ising order parameter として扱う。
この模型の Ising は、二成分 pseudospin の交換として入る。
これは各 orbital で と を入れ替える対称性である。
Hamiltonian はこの を保つように作られている。相互作用には pseudospin の 成分を使った Ising ferromagnetic term があり、さらに に比例する transverse field が入る。schematic には、
という構造である。ここでの は pseudospin の向きをそろえる相互作用、 は と を混ぜる transverse field である。詳しい式は次の節で見る。
order parameter は pseudospin の 成分で、
と書ける。この は fermion を作ったり消したりする演算子ではない。固定した半充填 sector の中で、 と の偏りを測る双線形演算子である。したがって、Ising order parameter として追う揺らぎは total charge を変えない particle-hole 型の pseudospin 励起になる。LLL 上の fermion は regularization のための自由度であり、IR で Ising CFT に対応するのは、この charge-neutral な pseudospin sector である。
では、全 orbital が にそろった状態と、全 orbital が にそろった状態が二つの縮退基底状態になる。これらは 変換で互いに入れ替わるので、基底状態を一つ選ぶと が自発的に破れた Ising ferromagnet になる。 が大きいと、各 orbital で 型の重ね合わせが好まれ、 を保つ paramagnet になる。この二つの相の間の連続転移が 3d Ising critical point に対応する。
この実装を踏まえると、spectrum analysis に出てくる sector は抽象的な後付けラベルではない。微視的模型の で定義される対称性の even / odd sector を、そのまま IR の Ising CFT の even / odd sector と対応させている。
Hamiltonian
前の節の schematic を orbital-basis 表示に書き直す。Zhu et al. (2023) の LLL 射影後の Hamiltonian は
である。各項は
は、球面上の同じ短距離二体相互作用を LLL orbital basis に射影した行列要素である。 はこの行列要素を total density channel に、 は pseudospin- density channel に入れている。つまり、 は 用と 用の別係数ではなく、この共有された二体相互作用の Haldane pseudopotential である。
対応する実空間表示は
である。LLL 射影後にはこの二つの項が と になり、 は正、 は負の符号を持つ。ここで
である。したがって
であり、 には spin operator のような は含まれていない。
実際の計算では、この pseudopotential を に絞る。 をエネルギー単位に固定し、 と transverse field を動かして相図を調べる。
の pseudospin 構造は、直感的には二つのサイト に対する
に近い。 を の向きだと思えば、この量は同じ向きでは 、逆向きでは になる。実際、
なので、逆向き pseudospin の pair だけが相互作用エネルギーを持つ。このエネルギーを避けるために pseudospin がそろう、という意味で Ising ferromagnetic term になっている。 は transverse field で、 と を混ぜる。
Spectrum
Hamiltonian の構成が分かっても、それだけでは fuzzy sphere から 3d Ising CFT のデータを得たことにはならない。次の段階は、有限サイズ spectrum の各状態を、 などの CFT operator とその descendants に対応づけることである。
critical point 近くで exact diagonalization した低エネルギー状態は、 spin 、Ising 、parity で分類される。ここで は空間反転に対する偶奇であり、CFT operator の parity と対応する。したがって有限サイズ spectrum のラベル は、CFT operator の spin 、 parity、spacetime parity を同定するための最初の手がかりになる。
energy gap から scaling dimension を抽出するには、全 spectrum に非普遍的な scale factor をかける。CFT では、sphere Hamiltonian は dilatation operator と
のように対応する。ここで は microscopic Hamiltonian の normalization に依存するので、有限サイズ spectrum だけから絶対値としては決まらない。
Zhu et al. (2023) では、この scale を energy-momentum tensor で固定する。 は任意の local 3d CFT にある conserved spin-2 primary で、、、、protected dimension を持つ。したがって、IR fixed point が 3d Ising CFT であるという前提のもとで、 sector の低い spin-2 state を の候補として使い、その gap が になるように spectrum 全体を rescale する。
これは「量子数だけでその state が自動的に と証明される」という意味ではない。stress-tensor calibration は、既知または期待される CFT に protected operator があることを使った normalization choice であり、その後に他の primary / descendant multiplets が正しい spin と shift で並ぶかを確認する。fuzzy-sphere regularization を使う後続研究でも、時間発展や correlator の radius を決めるときに や の既知 を使う方法が採られており、conformal-generator の構成では microscopic Hamiltonian density と CFT の の対応が finite-size で補正を受けることも明示されている。
の fuzzy-sphere spectrum では、次の primary operators が同定されている。
| operator | fuzzy-sphere | bootstrap / exact | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 0.524 | 0.518 | |||
| 0 | 1.414 | 1.413 | |||
| 2 | 3 | 3 | |||
| 0 | 3.838 | 3.830 | |||
| 2 | 4.214 | 4.180 | |||
| 0 | 5.303 | 5.291 | |||
| 2 | 5.583 | 5.509 | |||
| 4 | 5.103 | 5.023 |
表にはさらに高い primary や、parity-odd primary の 、 も載っている。ただし、最初に確認すべきなのは、低い primary とその conformal multiplet の対応である。
この対応は、あとで OPE coefficients を求めるときにも必要になる。例えば のような matrix element は、finite-size spectrum のどの状態を 、 に対応づけるかに依存する。個別 operator の同定リストより先に、energy gap、、、、stress-tensor calibration、descendant pattern がどの仮定と確認に支えられているかを固定する必要がある。
Multiplet 判定
operator identification は、単に「各 sector の低い state を既知の operator に対応させる」作業ではない。primary なら、その descendants も決まった energy shift と spin content で同じ spectrum に現れる。したがって判定の実体は、単独の準位を名付けることではなく、primary と descendants を一つの conformal multiplet としてまとめられるかを調べることである。
この descendant pattern を有限サイズ Hilbert 空間で直接調べたいなら、CFT の translation generator や special conformal generator に対応する microscopic operator が必要になる。以下の構成は、そのために Hamiltonian density から conformal generator を近似的に作る考え方である。
radial quantization では、局所 primary operator が sphere 上の state に対応する。平坦空間での derivative descendant
は、状態では translation generator を作用させた
に対応する。 は spin-1 の generator で、dimension を 1 上げる。
球面上で書くと、 は局所的な「球面微分」そのものではない。まず は、CFT を cylinder 上で radial quantization したときの energy density である。 は 上の点、 は cylinder time 方向を表す。これを球面全体で積分したものが、時間発展の generator、つまり dilatation generator になる。
fuzzy sphere の有限サイズ Hamiltonian では、この CFT の が最初から厳密に与えられているわけではない。実際にあるのは microscopic Hamiltonian density であり、
となるように Hamiltonian の one-body / two-body terms を球面上の density として書き直す。Ising fuzzy sphere なら、schematic には
のような形である。細かい係数や symmetrization は convention に依存するが、考え方は「Hamiltonian density を球面上の局所密度として選ぶ」ことである。
critical point の IR では、この が
のように対応すると期待する。この対応にも有限サイズ補正や改善項の曖昧さがある。
次に、 を球面 Hilbert 空間上の generator として表す。平坦空間 の translation と special conformal transformation の conformal Killing vectors は
である。radial quantization で として cylinder に移り、unit sphere 上では、この二つの和の時間方向成分が
になる。対応する保存電荷は、conformal Killing vector を stress tensor に contraction して球面上で積分したものである。ここでは時間方向成分だけが必要なので、
が得られる。さらに conformal algebra の 、 を使うと、 に対して
と分離できる。ここで は spherical harmonics の実基底なので、 は の projection である。
これはまだ CFT の式である。fuzzy sphere の有限系で使うには、 を 、 を に置き換える。ここで は、たとえば stress tensor 候補の gap が になるように決める spectrum normalization factor である。すると
が microscopic な 候補になる。 は定数なので commutator から落ちる。したがって有限 Hilbert 空間上では を計算し、
を作る、という順番である。
このため、ED spectrum では「primary の energy から 1 だけ上がったところに、spin が vector product の規則に従って現れる states」が descendant の候補になる。
ただし Zhu et al. (2023) の main spectrum analysis では、microscopic Hilbert 空間で を直接作って作用させているわけではない。まずは conformal representation theory が予測する descendant の energy / spin / parity pattern を列挙し、ED spectrum の states がその pattern を満たすかを調べている。Conformal generator を直接構成する後続研究では、この や に対応する microscopic operator を構成して、primary 判定をより直接に行う。
原理的には、 が分かれば primary 判定は直接になる。CFT では primary state は
で定義されるので、有限 fuzzy sphere 上では
が小さい state を primary 候補として選べる。ただし は microscopic Hamiltonian density から作る近似的な generator なので、有限サイズでは厳密に 0 になるとは限らない。したがって実際には、multiplet pattern による同定と、 の小ささを組み合わせて判定する。
これは を使った normalization の危うさも少し減らす。 の低い state を として使うだけだと、既知の Ising spectrum への依存が残る。そこに、 が conserved spin-2 primary であり short multiplet を持つこと、さらにその state で が小さいことを確認できれば、calibration state としての同定がより強くなる。
scalar primary の descendants は、schematic には
である。ここで は 3d Euclidean space の Laplacian を表す。したがって scalar primary は、予測できる spin と energy shift の塔を作る。例えば、
| primary | descendant | expected |
|---|---|---|
spinning primary では、derivative が spin を上げるだけでなく、index contraction によって spin を下げる descendant も出る。また、 を含む descendant は spacetime parity を反転させる。このため、parity-even の spinning primary から parity-odd descendant が出ることがある。
stress tensor は conserved operator なので特別である。
を満たすため、generic な spin-2 primary よりも descendant が少ない short multiplet になる。spectrum 上で を同定するときは、 の calibration だけでなく、この short multiplet structure も確認材料になる。
Primary 候補の割り当ては、spectrum を conformal multiplet ごとに消し込む作業になる。
- 各 sector で、まだ multiplet に割り当てていない lowest state を primary 候補にする。
- その候補の から、3d conformal representation theory が予測する descendants を列挙する。
- 対応する states が ED spectrum に出ているかを、finite-size drift を許して確認する。
- primary と descendants をまとめて一つの conformal multiplet として spectrum から取り除く。
- 残った states に同じ手順を繰り返す。
この意味で、 と は同定しやすい。odd / even sector の最も低い scalar primary であり、descendant tower も単純だからである。高い operator では、単一の energy level が bootstrap 値に近いことだけでは不十分で、multiplet 全体の pattern が合っているかを確認する必要がある。
4. OPE coefficients
Spectrum analysis では、fuzzy sphere の有限サイズ Hamiltonian から CFT primary の scaling dimension と spin を抽出する。次の段階である OPE extraction は、同じ Hilbert space の中で local microscopic operator の matrix element を測り、それを CFT の三点関数係数、つまり OPE coefficient に変換する方法である。
OPE coefficient は単なる追加の数値ではなく、CFT を定義する conformal data の一部である。scaling dimension が「どんな operator があるか」を教えるなら、OPE coefficient は「operator 同士を掛けたとき、どの channel にどれだけ流れるか」を教える。
CFT での形
CFT の primary operator は、二点関数の normalization を固定すると、三点関数の形が conformal symmetry によってほぼ固定される。scalar primary だけなら、schematic には
と書ける。この係数 が OPE coefficient である。同じ係数は、operator product expansion
にも現れる。
3d Ising CFT では selection rule がある。 は odd、 と は even なので、例えば
は許される。一方で、 parity が奇数個だけ odd になる三点係数は消える。
Hu, He, Zhu (2023) がやっていることは、Euclidean flat space 上の三点関数を直接測ることではない。radial quantization で局所 operator を sphere 上の状態に変換し、 上の同時刻 matrix element を測って、そこから同じ を求める。
この見方にすると、三点関数の難しさが
という量子力学的な matrix element の計算に置き換わる。ここで と は spectrum extraction で同定した CFT states であり、 は fuzzy sphere の microscopic probe である。具体例は 、、 などである。
Matrix elements
以後の は radial quantization で使う sphere radius である。CFT では は任意の長さスケールだが、fuzzy sphere の有限サイズ計算では cutoff を大きくする極限と結びつけて使う。LLL orbital 数を
と書くと、通常の fuzzy-sphere convention では有効半径が と scaling するように規格化する。したがって、大きい は大きい と同じ極限を表し、
であり、leading finite-size correction はしばしば correction として fit される。
まず、microscopic probe と CFT operator を分けておく。 は fuzzy sphere の有限 Hilbert space 上で定義された局所的な probe である。例えば は pseudospin density であって、CFT operator そのものではない。
critical point の IR では、 は同じ量子数を持つ CFT operators の和に展開される。OPE extraction で使うのは、この和のうち で最も遅く減衰する leading term である。
と書く。ここで は CFT の primary scaling operator、 は選んだ microscopic probe に依存する非普遍的な overlap である。 や のような高い primary も、量子数が合えばこの の和に含まれる。 は、dimensionless な microscopic operator と scaling dimension の CFT operator を対応させるための半径依存を表している。 と同じ 、spin、parity を持つ CFT operators だけがこの和に入る。
同じ量子数の中で最も小さい を持つ operator が、large- limit の leading contribution になる。例えば odd scalar probe なら、通常は が最初に残り、 などは だけ余分に抑えられる。したがって fuzzy sphere の有限サイズデータでは、この leading term への近づき方を調べて、 へ外挿する。
CFT では、primary states の間に CFT operator を挟んだ matrix element は、三点関数と同じ情報を持つ。したがって、 を挟むと
となる。比例係数には、operator dimensions、spin、挿入点 、spherical harmonic convention で決まる既知の角度因子が含まれる。scalar で同じ点・同じ component を比較する場合、この因子は ratio で消えるか、簡単な既知係数として扱える。
これを microscopic probe の展開に戻すと、
の形になる。実際には角度因子や tensor factor が付くが、ここでは scalar OPE の ratio を理解するために省いている。
OPE extraction の中心は、 で残る leading CFT operator の overlap を、matrix element の比で消すことにある。
例えば が を強く含むなら、
であり、
となる。したがって
が得られる。これは OPE coefficient の universal な部分だけを取り出し、microscopic normalization を ratio で消す操作である。
局所演算子
monopole background 上の一粒子波動関数は、monopole harmonics
と書く。ここで最初の は monopole charge、 は全角運動量、 はその 成分である。LLL は の multiplet だけなので、orbital は でラベルされる。
LLL orbital の coherent-state wavefunction を
と書く。これは、規格化と gauge patch の規約を除けば LLL monopole harmonic と同じ情報を持つ。二成分 Ising model では、pseudospin index を として、LLL に射影された field probe を
と書ける。CFT の Ising operator を探る対象は charge excitation ではなく、この から作る particle-hole 型の pseudospin density である。
基本的な spin density は
であり、通常の spherical harmonics で
と展開される。ここで は monopole charge のない通常の spherical harmonic であり、 とは別物である。 を使うのは、LLL orbital label と混同しないためである。
Hu, He, Zhu (2023) で中心になる probe は次の三つである。
| microscopic probe | symmetry | leading CFT content |
|---|---|---|
| odd | plus odd primaries / descendants | |
| even | plus even primaries / descendants | |
| even | improved probe |
ここで は Hamiltonian density で、
を満たすように定義される。
を そのものと同一視してはいけない。正確には、 は 、、、それらの descendants など、同じ symmetry を持つ CFT operators の混合である。ただし large では最も低い dimension を持つ が支配的になるため、matrix element の leading scaling から channel を抽出できる。
同じく や も そのものではない。 を leading component とする even probe である。複数の microscopic probes から同じ OPE coefficient が出るかどうかは、systematic error の確認になる。
Matrix element から OPE coefficient へ
OPE coefficient を出すために、まず spectrum で同定した states と、同じ量子数を持つ microscopic probe を組み合わせる。その matrix element には probe の非普遍的な normalization が入るので、基準になる matrix element で割ってから finite-size extrapolation を行う。
- Ising critical point に Hamiltonian を tune する。
- ED または DMRG で低エネルギー spectrum と eigenstates を得る。
- Spectrum extraction で 、、、、、、 などを同定する。
- 測りたい OPE coefficient に合う microscopic probe を選ぶ。
- と normalization 用の を計算する。
- 比を取り、非普遍的な operator normalization を消す。
- 有限サイズデータを へ外挿する。実用上は を fit 変数にする。
- 別 probe、別 fit 範囲、既知 bootstrap value との比較から誤差を見積もる。
Hu, He, Zhu (2023) では、ED は まで、DMRG はいくつかの量で まで使われている。
OPE extraction では、spectrum だけから決める場合よりも誤差の入り口が増える。
第一に、state の同定を間違えると matrix element の意味が変わる。OPE extraction は spectrum extraction の上に乗っている。
第二に、求めたい値は raw matrix element ではなく、 の leading channel の切片 である。local probe には同じ symmetry の primary や descendants が混ざるので、 や が定数へ近づくかを見ながら、fit 範囲 や補正形への依存を評価する必要がある。
Example:
は odd なので、 の leading term には最も低い odd scalar である が現れる。finite size では descendants や irrelevant-operator mixing 由来の correction が入るため、
と期待される。
一方で、
なので、比を取ると
となる。 は descendant correction の詳細に依存する非普遍的な係数である。したがって に対して線形 extrapolation し、 に対応する intercept を取ると、 が得られる。
Hu, He, Zhu (2023) の報告値は
であり、bootstrap value とよく合う。
この例は OPE extraction の最小単位である。必要なのは、三つの local operators を同時に測ることではなく、二つの CFT states と一つの microscopic local probe の matrix element を測ること。三点関数の係数が、sphere Hilbert space の matrix element に圧縮されている。
Spinning operators
や のような spinful primary を含む OPE coefficient では、matrix element に角度依存がある。そのため、球面上で spherical harmonics に射影して、対応する spin component を取り出す。
代表例として、 では、schematic に
の形になる。Hu, He, Zhu (2023) の convention では、この known tensor factor が として現れる。
spinning OPE では、値そのものだけでなく convention を確認する必要がある。どの component を使うか、どの spherical harmonic normalization を使うか、stress tensor をどう normalized するかで、式の見た目が変わる。
Spinning OPE では、細かい係数そのものよりも、まず次の点が効く。
- angular dependence は spherical harmonic projection で消す。
- Wigner-Eckart 的に、特定の component の matrix element から reduced coefficient を求める。
- scalar の ratio と同じく、microscopic probe の非普遍的 normalization は denominator で消す。
- tensor convention が違う場合、数値を直接比較できないことがある。
低い準位のデータ
Hu, He, Zhu (2023) で報告された主な OPE coefficients は次の通り。
| coefficient | fuzzy sphere | bootstrap / known |
|---|---|---|
| NA | ||
| NA | ||
| NA | ||
| NA |
この表で使われている primary dimensions は、おおよそ
fuzzy sphere の役割は、既知の bootstrap numbers を再現することに限られない。標準的な bootstrap table では扱いにくい、 や高い primary を含む OPE coefficients にも microscopic model から直接アクセスできる。
OPE coefficient が universal number になるのは、CFT operator の normalization を固定した後である。Microscopic probe には非普遍的な overlap が入るので、ratio formula でそれを消す。残る finite-size correction は、descendant、高い primary、irrelevant operator mixing から来る。多くの場合、その leading part を の補正として fit する。Spinning operator を含む場合は、さらに angular projection と tensor normalization の convention が入る。
OPE extraction で現れる量は、次の三つの層に分かれる。
| 層 | 対象 | 役割 |
|---|---|---|
| microscopic fuzzy sphere | , , | 有限 Hilbert 空間で計算する量 |
| radial quantization | , $\langle\phi_\alpha | \mathcal{O} |
| CFT data | , | 普遍量 |
は CFT operator そのものではなく、 を IR 展開に含む microscopic probe である。同様に、OPE coefficient は raw matrix element ではなく、normalization cancellation と finite-size extrapolation の後に残る universal intercept である。
5. Bulk correlators
bulk CFT は、原理的には spectrum と OPE coefficients で指定される。したがって four-point function は、完全な conformal data から独立した追加データではない。fuzzy sphere で得た有限サイズの states と local probes から、cross ratios に依存する CFT correlator を再構成する。
four-point correlator は、「3-point では足りないから足す observable」ではなく、bulk conformal data が関数として組み上がることを直接検査する対象である。
CFT での形
identical scalar の four-point function の非自明な部分は、schematic には
のように conformal block expansion で書ける。ここで は exchanged primary operator の spectrum data、 は OPE coefficient である。
したがって、four-point correlator で問題になるのは「新しい種類の CFT data は何か」ではない。有限サイズ fuzzy sphere で得た状態・operator probe・normalization が、CFT の cross-ratio-dependent function として整合的に組み上がるかである。
Fuzzy sphere での実装
radial quantization では、four-point function の一部の insertion を外部状態にし、残りを cylinder 上の operator insertion として扱える。
ここで が cross-ratio data を表す。fuzzy sphere では、外部状態は低エネルギー eigenstates、operator insertion は microscopic local probe として実装される。
Han, Hu, Zhu, He はこの方法で次の correlator を扱う。
実際の有限サイズ計算では、ここでも raw correlator をそのまま CFT correlator と同一視するわけではない。まず spectrum analysis で外部 states を などに対応づけ、次に local microscopic probe を対応する CFT operator の leading component として使う。そのうえで、sphere 上の時刻差と角度から cross ratios を作り、既知の scaling factor と probe normalization を取り除く。
したがって four-point correlator の検査点は三つある。第一に、外部 state の同定が spectrum / OPE extraction と同じ規約でそろっていること。第二に、probe の非普遍的 normalization が二点関数や三点関数で固定されていること。第三に、有限サイズ補正を含むデータが conformal block expansion の形に近づくことである。この意味で bulk correlator は、spectrum と OPE data を別の observable で再検査する場になっている。
6. Defect CFT
defect CFT は、bulk CFT の中に置いた line、surface、impurity などが IR で作る conformal fixed point を調べる枠組みである。Hu, He, Zhu の magnetic line defect は、3d Ising CFT に局所的な magnetic perturbation を入れたときの defect fixed point として扱う。
Magnetic line defect で扱う問題は、bulk CFT に局所的な perturbation を入れたとき、それが IR で conformal defect fixed point に流れるかである。非自明な defect fixed point に到達するなら、bulk theory の spectrum と OPE coefficients だけでは足りない。defect 上に住む operator、bulk operator の one-point function、bulk operator が defect に近づいたときの bulk-defect OPE を、defect term を含む有限サイズ Hamiltonian から求める必要がある。
fuzzy sphere では、defect を「格子上の境界」ではなく、radial quantization 後の 上の localized perturbation として扱う。これにより、bulk の球面幾何と angular momentum の構造をかなり保ったまま、defect fixed point の spectrum と correlator data を調べられる。
Defect perturbation
bulk spectrum や bulk OPE を扱うときは、critical point に tune した同じ Hamiltonian の低エネルギー Hilbert space から CFT data を抽出する。defect CFT では、Hamiltonian に localized perturbation を加える。したがって、調べているのは元の bulk Hamiltonian の追加 observable ではなく、defect term を含む別の Hilbert space problem である。
generic な local defect は、bulk の空間対称性や内部対称性を一部破る局所 perturbation である。conformal defect は、その perturbation が IR で scale / conformal symmetry を持つ defect fixed point に流れたものを指す。magnetic line defect では、局所的な magnetic perturbation が IR で conformal defect として振る舞うかを調べる。
schematic には、bulk CFT に 次元 defect を入れる変形は
のように書ける。magnetic line defect の場合、defect は一次元であり、3d Ising CFT の order-parameter channel、つまり 型の perturbation に結合する。
この変形が IR で消えてしまう場合、defect は trivial になる。一方、非自明な fixed point に流れる場合、bulk CFT とは別に defect CFT data を持つ。Hu, He, Zhu が示すのは、3d Ising CFT の magnetic line defect がこの非自明な conformal defect fixed point に流れ、その data を fuzzy sphere から抽出できるということである。
Line defect
flat space の line defect を radial quantization に移すと、時間方向は radial direction になり、空間断面は になる。ここで扱う defect は、radial quantization の中心を通る line defect である。この位置関係が重要である。
一般に、中心を通る 次元 defect は cylinder 上で
として見える。 は radial time、 は各 slice と defect の交わりである。
line defect は なので、各 slice との交わりは
である。 は二点集合である。具体的には、原点中心の各 slice は中心を通る line defect と二点で交わり、この二点を north pole と south pole に取る。したがって、cylinder 上では、defect は north/south pole に沿って time direction に伸びる二本の d impurity line として見える。
Hamiltonian は固定した radial-time slice 上の generator なので、fuzzy sphere ではその slice 上の二点に局在した項として入る。schematic には
であり、Hamiltonian の中では という二点の局所項として現れる。
したがって fuzzy sphere で変えるものは Hilbert space の幾何ではなく Hamiltonian である。LLL orbital から作る同じ many-body Hilbert space を使い、bulk critical Hamiltonian に defect term を足して
を対角化する。この defect term は schematic に
と書ける。これは 上の north/south pole における Ising order-parameter density への pinning field である。 が impurity strength を制御する。
この項は bulk の symmetry を defect で明示的に破り、defect 上で channel を有効にする。この deformation は line defect 上で relevant なので、系は非自明な conformal defect fixed point へ流れる。
supplement では、large limit を LLL orbital basis でさらに単純化している。pole-localized term は端の monopole orbital だけに作用し、
となる。したがって では、 の二つの端 orbital の spin を固定して計算できる。この pinned-orbital picture は、point impurity が LLL projection 後にどれだけ局所的な Hilbert-space constraint として現れるかを示している。
Symmetry
defect がない 3d CFT では、Euclidean conformal group は である。line defect を入れると、line に沿った conformal transformations と、line に垂直な rotations だけが残る。したがって、期待される defect conformal symmetry は
である。
fuzzy sphere の spectrum では、defect term を入れた Hamiltonian の低エネルギー準位が、この残った symmetry に合う形で並ぶかを調べる。bulk operator の場合は spin で multiplet を分類するが、line defect では defect に沿った scaling dimension と、defect に垂直な charge / angular momentum が主要なラベルになる。
このため、defect spectrum を bulk spectrum と同じ表として扱ってはいけない。defect 背景の低エネルギー state は、bulk local operator ではなく、defect 上の local operator に対応する。
Defect state-operator correspondence
bulk CFT の radial quantization では、原点に bulk local operator を挿入すると 上の state ができる。Hamiltonian は radial time translation の generator なので、その state の energy gap が bulk operator の scaling dimension を与える。
defect CFT では、同じ radial quantization を defect がある背景で行う。line defect が radial direction に沿って原点を通っていると、各 slice は north/south pole で defect と交わる。そのため量子化する Hilbert space は、defect term を含む Hamiltonian の Hilbert space になる。
このとき対応する operator は、bulk の点 operator ではなく、defect 上の radial-time origin に挿入される defect-local operator である。したがって
であり、defect Hamiltonian の energy gaps が defect operator dimensions を与える。ここで は defect が入った背景の ground state であって、defect なしの CFT vacuum ではない。
これが、displacement operator のような defect-local operator が finite-size spectrum の中に現れる理由である。spectrum に出るのは「bulk displacement field」ではなく、defect を横方向に動かす変形に対応する defect sector の state である。
Defect spectrum
Hu, He, Zhu は、magnetic line defect について六つの low-lying defect primary operators を同定し、その中に displacement operator を含めている。
displacement operator は、defect CFT で特別な operator である。defect がない bulk CFT では、translation symmetry に対応して stress tensor が保存する。
line defect を置くと、defect に沿った translations は残るが、defect を横方向に動かす translations は破れる。そのため、stress tensor の保存則は defect 上で接触項を持つ。schematic には、defect を に置いたとき、
のように書ける。ここで は defect に垂直な方向、 が displacement operator である。つまり は、defect を横方向へ少し動かす変形に対応する defect-local operator であり、broken transverse translation の Ward identity に現れる。
3d の line defect では、displacement operator の dimension は symmetry により
と期待される。したがって、spectrum の中にこの operator とその descendant structure が現れることは、defect fixed point の emergent conformal symmetry を検査する重要な手がかりになる。
ここでは次の区別を保つ。
| bulk spectrum | defect spectrum |
|---|---|
| bulk local primary | defect local primary |
| spin が基本ラベル | residual quantum number が基本ラベル |
| stress tensor など bulk protected operator が calibration と確認に使われる | displacement operator が conformal defect の確認材料になる |
Bulk one-point function
defect がない CFT vacuum では、非自明な primary operator の one-point function は通常消える。defect があると、defect が位置と方向を選ぶため、bulk primary の one-point function が許される。
line defect からの垂直距離を とすると、scalar bulk primary の one-point function は defect conformal symmetry により
のような形に固定される。ここで は one-point coefficient であり、defect CFT data の一部である。
fuzzy sphere では、bulk probe を defect 背景の ground state で測ることで、この one-point data に対応する量を得る。bulk OPE と同じく、microscopic probe は CFT operator そのものではない。 や などの local probe が、IR でどの CFT operator に overlap しているかを調べて正規化する必要がある。
Bulk-defect OPE
defect があると、bulk operator は defect に近づく極限で defect operators に展開できる。
ここで は defect operator、 はその scaling dimension、 は bulk-defect OPE coefficient である。
これは bulk OPE coefficient とは別の data である。bulk OPE は bulk operator 同士を近づけたときの展開であり、bulk-defect OPE は bulk operator を defect に近づけたときの展開である。
fuzzy sphere では、bulk probe と defect sector の state の matrix element / correlator を測り、defect conformal symmetry が固定する距離依存を取り除いて coefficient を抽出する。実際の数値比較では、ratio と normalization convention を extraction ごとにそろえる。
Magnetic line defect は、全ての time slices の north/south pole に置かれた時間非依存 Hamiltonian term として入る。そこから による流れ、residual symmetry による spectrum のラベル、defect state-operator correspondence、displacement operator、bulk one-point function、bulk-defect OPE coefficient を抽出する。
特に、defect spectrum は bulk spectrum table の延長ではない。defect term を入れた時点で、Hamiltonian、ground state、残る対称性、state-operator correspondence は defect sector のものに変わる。
References
- Zhu, Han, Huffman, Hofmann, He, “Uncovering conformal symmetry in the 3D Ising transition: State-operator correspondence from a fuzzy sphere regularization,” Phys. Rev. X 13, 021009 (2023). arXiv: https://arxiv.org/abs/2210.13482
- Hu, He, Zhu, “Operator Product Expansion Coefficients of the 3D Ising Criticality via Quantum Fuzzy Sphere,” Phys. Rev. Lett. 131, 031601 (2023). arXiv: https://arxiv.org/abs/2303.08844
- Han, Hu, Zhu, He, “Conformal four-point correlators of the 3D Ising transition via the quantum fuzzy sphere,” Phys. Rev. B 108, 235123 (2023). arXiv: https://arxiv.org/abs/2306.04681
- Hu, He, Zhu, “Solving Conformal Defects in 3D Conformal Field Theory using Fuzzy Sphere Regularization,” Nature Communications 15, 3659 (2024). arXiv: https://arxiv.org/abs/2308.01903