WZW Notes

6.2 SU(2)SU(2) WZW模型をbulk・boundary CFTとして解く

6.1節では、と、その表現 Hj\mathcal H_j、、、 FF を求めた。この節では、左右のカイラル理論を組み合わせてbulk理論を作り、そこに境界を入れる。

境界のない世界面では左右の励起を独立に用意できる。境界では、境界へ入ってきた励起と、そこから戻る励起との関係を指定しなければならない。その関係をcurrentに対して課すのがgluing条件である。この節では、全currentの対称性を保つ境界条件を扱う。一般の共形境界条件のうち、の豊かな対称性を利用できるクラスである。

境界条件が決まると、二つの境界の間にどの励起が存在するか、境界上の場を近づけるとどう結合するかを問える。前者がopen-string spectrum、後者がboundary OPEである。「open string」はここでは両端を境界条件に従わせた区間上の場の状態を指す。弦の時空質量を求める前に、まずこのCFTの状態空間を求める。

1. カイラル理論のデータ

k∈Z>0k\in\mathbb Z_{>0} を固定する。可積分な su^(2)k\widehat{\mathfrak{su}}(2)_k 表現は

j=0,12,…,k2j=0,\frac12,\ldots,\frac{k}{2}

でラベルし、その表現空間を Hj\mathcal H_j と書く。基底状態の共形ウェイト、中心電荷、modular SS-matrixは

hj=j(j+1)k+2,c=3kk+2,h_j=\frac{j(j+1)}{k+2}, \qquad c=\frac{3k}{k+2}, Sij=2k+2sin⁡ ⁣(π(2i+1)(2j+1)k+2).S_{ij} = \sqrt{\frac{2}{k+2}} \sin\!\left(\frac{\pi(2i+1)(2j+1)}{k+2}\right).

j+j^+ は、変換行列の各成分を複素共役して得る表現のラベルである。SU(2)SU(2) のスピン jj の既約表現は次元 2j+12j+1 で一意に決まり、複素共役してもこの次元は変わらない。従って共役表現も同じスピン jj に属し、j+=jj^+=j となる。この性質をと呼ぶ。

上の正弦公式で与えた SS は実対称であり、6.1で確認した正弦関数の直交性によりユニタリでもある。fusion係数 NijrN_{ij}{}^r は、chiral OPEで表現 i,ji,j を結合したときに表現 rr が現れる多重度である。SU(2)kSU(2)_k では 00 または 11 であり、許容条件は

∣i−j∣≤r≤min⁡(i+j,k−i−j),i+j+r∈Z.|i-j|\le r\le \min(i+j,k-i-j), \qquad i+j+r\in\mathbb Z .

2. bulk理論:左右のchiral sectorを対角に組み合わせる

2.1 bulk状態空間とmodular不変性

6.1節のchiral代数だけでは、左右のどの表現を組にしてbulkの状態にするかはまだ指定されていない。ここでは同じラベルの左右を一組ずつ用いる対角模型を選び、正則側と反正則側を

H(P)=⨁j=0k/2Hj⊗H‾j\boxed{ \mathcal H^{(P)} = \bigoplus_{j=0}^{k/2} \mathcal H_j\otimes\overline{\mathcal H}_j }

と組み合わせる。各tensor積の中では左右の励起を独立に作り、直和は各ラベルの状態空間をすべて並べることを表す。一般には右側に j+j^+ が来るcharge-conjugation invariantだが、SU(2)SU(2) では j+=jj^+=j なので対角形と一致する。この選択の整合性を確かめる一つの条件が、トーラス分配関数のmodular不変性である。

H‾j\overline{\mathcal H}_j は反正則側の表現空間を表す。barは複素共役した数値という意味ではなく、右側のchiral代数のcopyを区別する記号である。

対応するトーラス分配関数は

Z(τ,τˉ)=∑j=0k/2χj(τ)χj(τ)‾(6.14)\boxed{ Z(\tau,\bar\tau) = \sum_{j=0}^{k/2} \chi_j(\tau)\overline{\chi_j(\tau)} } \tag{6.14}

である。SS 変換後の χjχr‾\chi_j\overline{\chi_r} の係数は ∑iSijSir∗=δjr\sum_iS_{ij}S_{ir}^*=\delta_{jr} なので、同じ対角和へ戻る。T:τ↦τ+1T:\tau\mapsto\tau+1 では左側に e2πi(hj−c/24)e^{2\pi i(h_j-c/24)}、右側にその逆位相が掛かり、各積が不変になる。S,TS,T がmodular群を生成するため、これでmodular不変性が従う。

計算:SS のユニタリ性と左右の TT 位相からmodular不変性を確かめる

χi(−1/τ)=∑jSijχj(τ)\chi_i(-1/\tau)=\sum_jS_{ij}\chi_j(\tau) を式 に代入する。複素共役は係数にも作用するので

χi(−1/τ)‾=∑rSir∗χr(τ)‾.\overline{\chi_i(-1/\tau)}=\sum_rS_{ir}^*\overline{\chi_r(\tau)}.

次の式変形では、まず同じ ii に属する左右の和を展開し、次に ii の和をまとめる。

Z′\displaystyle Z'=
∑i(∑jSijχj)(∑ℓSiℓ∗χℓ‾)\displaystyle \sum_i\Bigl(\sum_j S_{ij}\chi_j\Bigr)\Bigl(\sum_\ell S_{i\ell}^{*}\overline{\chi_\ell}\Bigr)
=
∑j,ℓ(∑iSijSiℓ∗)χjχℓ‾\displaystyle \sum_{j,\ell}\Bigl(\sum_i S_{ij}S_{i\ell}^{*}\Bigr)\chi_j\overline{\chi_\ell}
=
∑jχjχj‾=Z\displaystyle \sum_j\chi_j\overline{\chi_j}=Z

もう一つの生成元 TT も調べる。

Hj\mathcal H_j の L0L_0 固有値は hj+Nh_j+N、N∈Z≥0N\in\mathbb Z_{\geq0} である。τ↦τ+1\tau\mapsto\tau+1 の各状態の位相は e2πi(hj+N−c/24)=e2πi(hj−c/24)e^{2\pi i(h_j+N-c/24)}=e^{2\pi i(h_j-c/24)} なので

χj(τ+1)=e2πi(hj−c/24)χj(τ).\chi_j(\tau+1)=e^{2\pi i(h_j-c/24)}\chi_j(\tau).

hj,ch_j,c は実数であり、右側の複素共役characterには逆位相が掛かる。したがって各 ∣χj∣2|\chi_j|^2 はそれぞれ不変である。S,TS,T がmodular群を生成するため、両方の確認から式 のmodular不変性が従う。

2.2 ground stateに対応するbulk場

分配関数は状態を数えるが、局所的に何を挿入するかは状態・場対応で定める。点の周りを小さな円で囲み、その点に場を挿入すると円上の状態が用意される。逆に、円上の状態を指定して円を点へ縮めることで対応する局所場を表す。

Hj\mathcal H_j の最低エネルギー部分は、6.1節で求めた 2j+12j+1 個の状態 ∣j;m⟩|j;m\rangle からなる。左右それぞれから一つ選ぶと、bulkには (2j+1)2(2j+1)^2 成分のground-state multipletができる。その成分に対応する場を

φj,jmn(z,zˉ):=Φ ⁣(∣j;m⟩⊗∣j;n⟩‾;z,zˉ)(6.15)\boxed{ \varphi_{j,j}^{mn}(z,\bar z) := \Phi\!\left( |j;m\rangle\otimes\overline{|j;n\rangle}; z,\bar z \right) } \tag{6.15}

と書く。これは式 (3.27) のstate-field correspondenceを用いた記法である。m,n=−j,−j+1,…,jm,n=-j,-j+1,\ldots,j は左右の成分ラベルである。左の mm はスピン生成子 J00=J03/2J_0^0=J_0^3/\sqrt2 の固有値とする。右側は左表現の双対基底でラベルし、∣j;n⟩‾\overline{|j;n\rangle} の Jˉ00\bar J_0^0 固有値は −n-n とする。この規約では左右を結ぶ不変tensorが δmn\delta^{mn} となり、後のone-point functionと記法が揃う。すべての成分は同じgrade 00 の多重項に属する。正モード LnL_n は L0L_0 固有値を nn だけ下げるが、ground stateより低い状態は存在しないため、n>0n>0 で LnL_n はこれらを消す。右側も同様なので、全成分がウェイト (hj,hj)(h_j,h_j) のVirasoro primaryである。

導出:ground stateの全成分がVirasoro primaryになる理由

正則側では L0∣j;m⟩=hj∣j;m⟩L_0|j;m\rangle=h_j|j;m\rangle であり、hjh_j がこの表現の最小 L0L_0 固有値である。[L0,Ln]=−nLn[L_0,L_n]=-nL_n を使うと

L0Ln∣j;m⟩=(hj−n)Ln∣j;m⟩.L_0L_n|j;m\rangle=(h_j-n)L_n|j;m\rangle.

n>0n>0 で右辺の状態が非零なら、最小固有値 hjh_j より低い状態が存在してしまう。従って Ln∣j;m⟩=0L_n|j;m\rangle=0 である。これがすべての mm についてVirasoro primaryとなる理由である。反正則側も同様である。

同じ議論を [L0,Jna]=−nJna[L_0,J_n^a]=-nJ_n^a に適用すれば、Jna∣j;m⟩=0J_n^a|j;m\rangle=0 は全成分について n>0n>0 で成立する。ただし零モードはエネルギーを変えず、grade 00 内で

J00∣j;m⟩=m∣j;m⟩,J0+∣j;m⟩=(j−m)(j+m+1) ∣j;m+1⟩J_0^0|j;m\rangle=m|j;m\rangle,\qquad J_0^+|j;m\rangle=\sqrt{(j-m)(j+m+1)}\,|j;m+1\rangle

と作用する。最高ウェイト条件 J0+∣j;m⟩=0J_0^+|j;m\rangle=0 まで満たすのは m=jm=j である。右側も最高ウェイトとは実際のスピン固有値が jj の状態を指す。本文の双対基底のラベルではこれは n=−jn=-j に対応する。左右の最高ウェイト条件を同時に課す場合は、m=j,n=−jm=j,n=-j となる。

次に、bulk場 のOPEを求める。fusion則は出力の候補を与え、共形対称性は距離のべきを決める。各候補がどの強さで現れるかは、模型の三点結合のデータである構造定数 Cj1,j2k;j3C_{j_1,j_2}^{k;j_3} が決める。これは磁気量子数への依存を取り除いた係数であり、スピンとレベル kk に依存する。

原著 §6.2.1:bulk構造定数の閉形式と適用条件

原著 §6.2.1(printed p. 242、同所の文献 [463])の場と結合係数の規格化では、fusionで許される三つのスピンについて

Cj1,j2src;k;j3=(s+1)! P(s+1)P(1)1/2×∏ν=13P(j^ν)j^ν!(2jν+1)1/2(2jν)! P(2jν)1/2P(2jν+1)1/2,s:=j1+j2+j3,j^ν:=s−2jν,\begin{aligned} C_{j_1,j_2}^{\mathrm{src};k;j_3} ={}&(s+1)!\,P(s+1)P(1)^{1/2}\\ &\times\prod_{\nu=1}^3 \frac{P(\widehat j_\nu)\widehat j_\nu!} {(2j_\nu+1)^{1/2}(2j_\nu)!\, P(2j_\nu)^{1/2}P(2j_\nu+1)^{1/2}},\\ s:={}&j_1+j_2+j_3,\qquad \widehat j_\nu:=s-2j_\nu, \end{aligned}

と与えられる。ここで Γ\Gamma はGamma関数であり、

P(0)=1,P(ℓ)=∏n=1ℓΓ ⁣(n/(k+2))Γ ⁣(1−n/(k+2))(ℓ∈Z>0)P(0)=1,\qquad P(\ell)=\prod_{n=1}^{\ell} \frac{\Gamma\!\left(n/(k+2)\right)} {\Gamma\!\left(1-n/(k+2)\right)} \quad(\ell\in\mathbb Z_{>0})

と定義する。fusion条件により ss と j^ν\widehat j_\nu は非負整数で、s≤ks\leq k である。従って階乗の引数は非負で、PP に現れる nn は 1≤n≤k+11\leq n\leq k+1 に収まる。Gamma関数の引数はともに正なので、平方根には正の値を選べる。fusionで禁止されたchannelはOPEの和に含めない。

この閉形式と、本文で選んだ通常の単位規格化Clebsch–Gordan係数は、規格化を揃えて用いる。閉形式は三ラベルに対称であり、恒等場を含む値は C0,jsrc;k;j=Cj,jsrc;k;0=1C_{0,j}^{\mathrm{src};k;j}=C_{j,j}^{\mathrm{src};k;0}=1 である。一方、単位CGで j⊗j→0j\otimes j\to0 を結ぶ係数は大きさ 1/2j+11/\sqrt{2j+1} なので、左右の積は 1/(2j+1)1/(2j+1) となる。閉形式をそのまま本文のCGへ掛けると、bulk場の二点規格化もこの値になる。

本文の境界一点関数と次節の正規直交波 2j+1Dmnj\sqrt{2j+1}D^j_{mn} に合わせ、各bulk場を 2j+1\sqrt{2j+1} 倍して単位の二点規格化にする。この変更で、二入力の倍率を出力の倍率で割るため、本文のreduced OPE係数は

Cj1,j2k;j3=(2j1+1)(2j2+1)2j3+1 Cj1,j2src;k;j3.C_{j_1,j_2}^{k;j_3} =\sqrt{\frac{(2j_1+1)(2j_2+1)}{2j_3+1}}\, C_{j_1,j_2}^{\mathrm{src};k;j_3}.

従って C0,jk;j=1C_{0,j}^{k;j}=1 は保たれ、Cj,jk;0=2j+1C_{j,j}^{k;0}=2j+1 が左右CGの 1/(2j+1)1/(2j+1) を打ち消す。原著の閉形式・三点結合の規格化と、本文のCG/場の規格化を区別することで、OPEと境界一点関数を同じ場について比較できる。例えば j1=0, j2=j3=jj_1=0,\ j_2=j_3=j では s=2js=2j、(j^1,j^2,j^3)=(2j,0,0)(\widehat j_1,\widehat j_2,\widehat j_3)=(2j,0,0) を代入すると積が相殺し、C0,jk;j=1C_{0,j}^{k;j}=1 になる。これは恒等場とのOPEの規格化を確かめる例である。一般に場を φj,j↦ajφj,j\varphi_{j,j}\mapsto a_j\varphi_{j,j} と規格化し直せば、係数は Cj1,j2k;j3↦(aj1aj2/aj3)Cj1,j2k;j3C_{j_1,j_2}^{k;j_3}\mapsto(a_{j_1}a_{j_2}/a_{j_3})C_{j_1,j_2}^{k;j_3} と変わる。

磁気量子数の結合には、通常の有限次元SU(2)表現 VjV_j(次元 2j+12j+1)のtensor積分解を既知の表現論データとして採用する。Vj1⊗Vj2V_{j_1}\otimes V_{j_2} には r=∣j1−j2∣,∣j1−j2∣+1,…,j1+j2r=|j_1-j_2|,|j_1-j_2|+1,\ldots,j_1+j_2 の各 VrV_r が一度ずつ現れる。これは零モードのスピンを合成する規則であり、レベル kk による追加の制限を持つアフィンfusion則とは区別する。

ground state成分のOPEで、磁気量子数 m,nm,n への依存を決めるのは左右の零モードのWard恒等式である。Ward恒等式は「二つの入力を回転してから結合する」と「結合した出力を回転する」が同じであることを要求する。スピン j1,j2j_1,j_2 のtensor積には各許容スピン j3j_3 が一度ずつ現れるため、この条件を満たす結合写像は全体定数を除いて一つであり、Clebsch–Gordan係数で表せる。その全体定数を Cj1,j2k;j3C_{j_1,j_2}^{k;j_3} に含める。以下では

βj1j2j3m1m2m3:=⟨j3,m3∣j1,m1;j2,m2⟩=[j1j2j3m1m2m3]\beta_{j_1j_2j_3}^{m_1m_2m_3} :=\langle j_3,m_3\mid j_1,m_1;j_2,m_2\rangle =\begin{bmatrix}j_1&j_2&j_3\\m_1&m_2&m_3\end{bmatrix}

と書く。これは二つの入力から出力への結合係数であり、m3=m1+m2m_3=m_1+m_2 のときだけ非零である。反正則側には、原著の規約でその複素共役が現れる。

導出:零モードのWard恒等式がClebsch–Gordan係数を選ぶ

VjV_j はgrade 00 のスピン jj 表現とする。OPEの正則側で、固定した出力 j3j_3 の磁気量子数への依存を線形写像

B:Vj1⊗Vj2⟶Vj3,B(∣j1,m1⟩⊗∣j2,m2⟩)=∑m3Bm1m2m3∣j3,m3⟩B:V_{j_1}\otimes V_{j_2}\longrightarrow V_{j_3},\qquad B(|j_1,m_1\rangle\otimes|j_2,m_2\rangle) =\sum_{m_3}B_{m_1m_2}^{m_3}|j_3,m_3\rangle

で表す。全体に零モード J0aJ_0^a を作用させるとき、二つの入力を変換してからOPEを取っても、OPEの出力を変換しても同じになる。これがWard恒等式

B(tj1a⊗1+1⊗tj2a)=tj3aBB\bigl(t_{j_1}^a\otimes\mathbf1+\mathbf1\otimes t_{j_2}^a\bigr) =t_{j_3}^a B

であり、BB が SU(2)SU(2) の作用と両立するintertwinerであることを意味する。

t0=t3/2t^0=t^3/\sqrt2 の条件を基底状態に作用させると

(m1+m2)Bm1m2m3=m3Bm1m2m3.(m_1+m_2)B_{m_1m_2}^{m_3}=m_3B_{m_1m_2}^{m_3}.

従って m3≠m1+m2m_3\neq m_1+m_2 なら係数は零になる。上昇演算子については

(j1−m1)(j1+m1+1) Bm1+1,m2m3+(j2−m2)(j2+m2+1) Bm1,m2+1m3=(j3−m3+1)(j3+m3) Bm1,m2m3−1.\begin{aligned} &\sqrt{(j_1-m_1)(j_1+m_1+1)}\,B_{m_1+1,m_2}^{m_3}\\ &\quad+\sqrt{(j_2-m_2)(j_2+m_2+1)}\,B_{m_1,m_2+1}^{m_3}\\ &=\sqrt{(j_3-m_3+1)(j_3+m_3)}\,B_{m_1,m_2}^{m_3-1}. \end{aligned}

左辺は二つの入力のどちらを上げるかを足し、右辺は出力の m3−1m_3-1 を上げて m3m_3 を得ている。この関係と下降演算子の関係が、多重項内の異なる係数を結ぶ。

通常の SU(2)SU(2) の分解 Vj1⊗Vj2=⨁r=∣j1−j2∣j1+j2VrV_{j_1}\otimes V_{j_2}=\bigoplus_{r=|j_1-j_2|}^{j_1+j_2}V_r は1刻みで、各 VrV_r は一度だけ現れる。従って許される j3j_3 へのintertwiner空間は一次元であり、基底と位相を固定すれば、解はClebsch–Gordan係数の定数倍に限られる。その定数がreduced coefficientへ吸収される。

零モードの議論が決めるのは、この磁気量子数依存である。有限レベルの制限 j3≤k−j1−j2j_3\leq k-j_1-j_2 とreduced coefficientの数値には全current代数の情報が必要になる。左右は独立に同じ制約を課すので、bulk係数は左の β\beta と右の β∗\beta^* の積を含む。さらに正のgradeのdescendantに対する係数は、非零モードも含めたWard恒等式で決まる。

以上を合わせると、SU(2)SU(2) WZW模型のground stateに対応する場のOPEは

φj1,j1m1n1(z,zˉ)φj2,j2m2n2(w,wˉ)=∑j3,m3,n3∣z−w∣2hj3−2hj1−2hj2Cj1,j2k;j3βj1j2j3m1m2m3(βj1j2j3n1n2n3)∗φj3,j3m3n3(w,wˉ)+⋯ .\begin{aligned} &\varphi_{j_1,j_1}^{m_1n_1}(z,\bar z) \varphi_{j_2,j_2}^{m_2n_2}(w,\bar w)\\ &\quad = \sum_{j_3,m_3,n_3} |z-w|^{2h_{j_3}-2h_{j_1}-2h_{j_2}} C_{j_1,j_2}^{k;j_3} \beta_{j_1j_2j_3}^{m_1m_2m_3} \left(\beta_{j_1j_2j_3}^{n_1n_2n_3}\right)^* \varphi_{j_3,j_3}^{m_3n_3}(w,\bar w) +\cdots . \end{aligned}

和はfusionで許される j3j_3 と、その多重項の m3,n3m_3,n_3 を走る。距離因子の指数は、出力の全ウェイト 2hj32h_{j_3} から二つの入力の全ウェイト 2hj1+2hj22h_{j_1}+2h_{j_2} を引いたものになる。これにより両辺が同じスケール変換を受ける。⋯\cdots は正のgradeのdescendantの寄与を表す。

計算:OPEの距離のべきと左右の係数を組み合わせる

正則側では出力のウェイトが hj3h_{j_3}、二つの入力の和が hj1+hj2h_{j_1}+h_{j_2} なので、スケール変換の釣り合いから (z−w)hj3−hj1−hj2(z-w)^{h_{j_3}-h_{j_1}-h_{j_2}} が掛かる。反正則側は同じウェイト差をもつ (zˉ−wˉ)hj3−hj1−hj2({\bar z}-{\bar w})^{h_{j_3}-h_{j_1}-h_{j_2}} である。対角模型では両者の積が

(z−w)hj3−hj1−hj2(zˉ−wˉ)hj3−hj1−hj2=∣z−w∣2hj3−2hj1−2hj2(z-w)^{h_{j_3}-h_{j_1}-h_{j_2}} (\bar z-\bar w)^{h_{j_3}-h_{j_1}-h_{j_2}} =|z-w|^{2h_{j_3}-2h_{j_1}-2h_{j_2}}

になる。左右のWard恒等式がそれぞれ βm1m2m3\beta^{m_1m_2m_3} と (βn1n2n3)∗(\beta^{n_1n_2n_3})^* を与え、残ったスピンとレベルへの依存を Cj1,j2k;j3C_{j_1,j_2}^{k;j_3} が担う。共形対称性、零モード対称性、残る三点結合のデータが、この順にOPEの各因子を決めている。

3. one-point functionとboundary state

同じbulk理論に境界を入れると、bulkの各状態への結合の強さを選ぶ必要がある。currentの反射の仕方を決めれば、その強さまで決まるだろうか。まずgluingを満たす境界状態を作り、そこに残る自由度を調べる。

境界を入れると、そこでcurrentやエネルギーがどう反射するかを指定する必要がある。上半平面の実軸上で、を Ja(x)=Jˉa(x)J^a(x)=\bar J^a(x) と結ぶtrivial gluing Ω=id\Omega=\mathrm{id} を選ぶ。の TT と Tˉ\bar T は同じ係数のcurrentの二次式なので、この等式から T(x)=Tˉ(x)T(x)=\bar T(x) が従う。左右のエネルギー流の差が零となり、境界の外へエネルギーを流さない。

境界の影響をbulk側から記録するのが境界状態である。diskの物理的な境界と、その内側に引いた円との間で経路積分すると、円上の各closed-string状態への振幅が得られる。それらをまとめた ∥B⟩⟩\|B\rangle\rangle は「その境界がbulkの各状態にどれだけ結合するか」を表す。境界上を動く励起の状態空間は、後で別に求める。

ここで選んだbulk模型は有限個のchiral sectorをもつcharge-conjugation型である。以下ではtrivial gluingを保つ境界について、Cardy構成を使う。

3.1 Cardy conditionはannulusの二つの量子化を一致させる

実軸の境界を単位円へ写した複素座標を ww とする。境界上では反正則座標が wˉ=1/w\bar w=1/w なので、実軸に沿う微分には dwˉ/dw=−w−2d\bar w/dw=-w^{-2} が付く。currentはウェイト1であり、座標変換ではこの微分因子を一つ掛ける。従って、実軸の Ja=JˉaJ^a=\bar J^a は円上で wJa(w)+wˉJˉa(wˉ)=0wJ^a(w)+\bar w\bar J^a(\bar w)=0 となる。

円周を w=eiσw=e^{i\sigma} で表す。モード展開を代入すると、左のcurrentは ∑nJnae−inσ\sum_nJ_n^ae^{-in\sigma}、右は ∑nJˉ−nae−inσ\sum_n\bar J_{-n}^ae^{-in\sigma} になる。各Fourier係数が零になることが、境界状態を Jna+Jˉ−naJ_n^a+\bar J_{-n}^a が消す条件である。左右のcurrentがそれぞれ零になる条件ではなく、同じ境界で値が対応する条件である。各対角bulk sector Hj⊗Hj‾\mathcal H_j\otimes\overline{\mathcal H_j} ごとに、この条件

(Jna+Jˉ−na)∣j⟩⟩=0,a=1,2,3(Ishibashi-gluing)\boxed{ (J_n^a+\bar J_{-n}^a)|j\rangle\rangle=0, \qquad a=1,2,3 } \tag{Ishibashi-gluing}

を満たすIshibashi状態 ∣j⟩⟩|j\rangle\rangle がある。条件は境界状態に対して線形なので、各部品が条件を満たせば、その任意の線形結合

∥A⟩⟩=∑jBAj∣j⟩⟩(general-boundary-state)\|A\rangle\rangle =\sum_j B_A{}^j|j\rangle\rangle \tag{general-boundary-state}

も許される。Ishibashi状態は、同じエネルギーをもつ左右の状態を全levelにわたって対にした形式的な和である。したがって通常の有限ノルムの状態ではないが、有限の伝播時間を挟んだ振幅を計算できる。この局所的なgluing条件だけでは、各sectorをどの強さで混ぜるか、すなわち係数 BAjB_A{}^j は決まらない。境界状態のノルムと整合性

境界状態のノルムが無限でも、何を計算できるのか?

境界状態はbulkへの結合をまとめた形式的な状態で、伝播因子を挟んだ振幅が計算の対象になる。

ここでHcH_cはclosed側の伝播を生成するHamiltonian、ttはEuclid時間である。Ishibashi状態は、左右の同じエネルギーの状態を全levelにわたって足し合わせる。そのままノルムを取ると無限個の項が残る。有限時間の伝播を挟むと、高いエネルギーの項に小さな重みが付き、和をcharacterとして計算できる。境界状態とbulk場との重なりは、diskのone-point functionを与える。

この振幅を計算できることに加え、annulusをopen側から読んだとき各表現の重複度が非負整数であることも必要になる。それがCardy条件である。さらに境界場のOPE順序を変えても相関関数が一致することは、後のboundary sewingで確かめる。これらが同じ境界の局所的な結合と状態数を結びつける。

⟨⟨B1∥e−tHc∥B2⟩⟩,t>0\langle\langle B_1\|e^{-tH_c}\|B_2\rangle\rangle,\qquad t>0

参照:6.2.2–6.2.3 · 式 とCardy構成

係数 BAjB_A{}^j を選ぶには、境界の局所条件とは別の条件を使う。二つの境界を端にもつ円筒、すなわちannulusを考える。円筒の長さ方向をEuclid時間に取ると、円周上のclosed stringが一方の境界から他方へ伝播する。一方、円周方向を時間に取ると、両境界を端点とするopen stringが一周して元に戻るので、その状態についてのtraceになる。これは同じ世界面の経路積分を二通りに読んでいる。

同じannulusを長方形に開き、上下辺を同一視して示す。閉弦の見方では左右の境界間を時間が進み、縦の断面は円になる。開弦の見方では上下の周期方向に時間が進み、横の断面は両端を境界に置く区間になる。

図の上下辺は同一視されている。横方向を時間に取ると空間断面は円、縦方向を時間に取ると空間断面は区間になる。open区間の長さを LL、Euclid時間の周期を β\beta とする。区間のHamiltonianは Hopen=π(L0−c/24)/LH_{\rm open}=\pi(L_0-c/24)/L なので、e−βHopen=qL0−c/24e^{-\beta H_{\rm open}}=q^{L_0-c/24} に合わせるcharacterのmodulusは τ=iβ/(2L)\tau=i\beta/(2L) である。以下では t:=β/(2L)>0t:=\beta/(2L)>0 と定め、τ=it\tau=it を使う。二方向の交換でclosed側のmodulusは −1/τ-1/\tau となる。

open側でsector Hr\mathcal H_r が nABrn_{AB}{}^r 個現れるなら、その状態のtraceは

ZABopen=∑rnABrχr(τ)Z_{AB}^{\rm open}=\sum_r n_{AB}{}^r\chi_r(\tau)

となる。nABrn_{AB}{}^r は状態空間のコピー数なので、各 rr について非負整数でなければならない。同じannulusをclosed側で計算した値も、この形に書ける必要がある。

そこで、まだ係数を自由にした境界状態をclosed側の振幅へ代入する。Ishibashi状態は同じsectorの左右の基底を一対ずつ足した和なので、伝播を挟んだ重なりは一つのcharacterになる。6.1のmodular変換 χℓ(−1/τ)=∑rSℓrχr(τ)\chi_\ell(-1/\tau)=\sum_rS_{\ell r}\chi_r(\tau) を使えば

ZABclosed=∑ℓ(BAℓ)∗BBℓχℓ(−1/τ)=∑r[∑ℓ(BAℓ)∗BBℓSℓr]χr(τ).\begin{aligned} Z_{AB}^{\rm closed} &=\sum_\ell(B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell\chi_\ell(-1/\tau)\\ &=\sum_r\left[\sum_\ell(B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell S_{\ell r}\right]\chi_r(\tau). \end{aligned}

open側と同じcharacterの係数を比べると、自由な係数 BAjB_A{}^j には、gluingだけでは課されていなかった条件が見える:

nABr=∑ℓ(BAℓ)∗BBℓSℓr∈Z≥0(Cardy-condition)\boxed{ n_{AB}{}^r = \sum_\ell (B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell S_{\ell r} \in\mathbb Z_{\geq0} } \tag{Cardy-condition}

これがCardy conditionである。必要なのは BAjB_A{}^j 自体の非負性ではなく、この和が各open sectorのコピー数になることである。

annulusの二つの切り方から非負整数条件を導く

annulusのopen-channelのmodulusを τ=it\tau=it(t>0t>0)とし、q=e2πiτq=e^{2\pi i\tau}、q~=e−2πi/τ\widetilde q=e^{-2\pi i/\tau} と置く。closed側の伝播演算子には

H~c=12(L0+Lˉ0−c12)\widetilde H_c=\frac12\left(L_0+\bar L_0-\frac c{12}\right)

を使う。係数 1/21/2 は、では左右の共形ウェイトが等しく、各対の指数を一つのchiral characterの L0−c/24L_0-c/24 に合わせるために必要である。

sector ℓ\ell の正規直交基底を ∣ℓ;α⟩|\ell;\alpha\rangle とし、その L0L_0 固有値を hαh_\alpha と書く。Ishibashi状態は、それぞれの左基底とgluingが指定する右基底を一対ずつ同じ係数で足した形式的な状態である。異なるsectorは直交し、同じsectorでは基底の直交性によって

⟨⟨ℓ∣q~H~c∣m⟩⟩=δℓm∑αq~12(2hα−c/12)=δℓm∑αq~hα−c/24=δℓmχℓ(q~).\begin{aligned} \langle\langle\ell|\widetilde q^{\widetilde H_c}|m\rangle\rangle &=\delta_{\ell m}\sum_\alpha \widetilde q^{\frac12(2h_\alpha-c/12)}\\ &=\delta_{\ell m}\sum_\alpha\widetilde q^{h_\alpha-c/24} =\delta_{\ell m}\chi_\ell(\widetilde q). \end{aligned}

挿入なしのIshibashi状態は規格化できないが、0<q~<10<\widetilde q<1 の伝播因子を挟めば、この和はcharacterとして評価される。境界状態を両側で展開すると

⟨⟨A∥q~H~c∥B⟩⟩=∑ℓ,m(BAℓ)∗BBm⟨⟨ℓ∣q~H~c∣m⟩⟩=∑ℓ(BAℓ)∗BBℓχℓ(q~).\begin{aligned} \langle\langle A\|\widetilde q^{\widetilde H_c}\|B\rangle\rangle &=\sum_{\ell,m}(B_A{}^\ell)^*B_B{}^m \langle\langle\ell|\widetilde q^{\widetilde H_c}|m\rangle\rangle\\ &=\sum_\ell(B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell\chi_\ell(\widetilde q). \end{aligned}

したがって、二つの境界条件 A,BA,B をもつannulusをclosed-string channelで切ると

ZABclosed(q~)=∑ℓ(BAℓ)∗BBℓχℓ(q~)(general-closed-annulus)Z_{AB}^{\mathrm{closed}}(\widetilde q) = \sum_\ell (B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell \chi_\ell(\widetilde q) \tag{general-closed-annulus}

となる。同じannulusを直交する方向に切れば、両端に A,BA,B をもつopen stringのthermal traceでなければならない:

ZABopen(q)=Tr⁡HABqL0−c/24=∑rnABrχr(q),nABr∈Z≥0.(general-open-annulus)Z_{AB}^{\mathrm{open}}(q) = \operatorname{Tr}_{\mathcal H_{AB}} q^{L_0-c/24} = \sum_r n_{AB}{}^r\chi_r(q), \qquad n_{AB}{}^r\in\mathbb Z_{\geq0}. \tag{general-open-annulus}

ここで非負整数 nABrn_{AB}{}^r は、open-string Hilbert空間に表現 Hr\mathcal H_r が何個現れるかを数える。同じ世界面path integralの二つの量子化なので、両式はmodular変換で一致しなければならない。式 を z=u=0z=u=0 に特殊化した

χℓ(q~)=∑rSℓrχr(q)\chi_\ell(\widetilde q) =\sum_rS_{\ell r}\chi_r(q)

をclosed-channel式へ代入すると、

ZAB=∑ℓ(BAℓ)∗BBℓ∑rSℓrχr(q)=∑r[∑ℓ(BAℓ)∗BBℓSℓr]χr(q).\begin{aligned} Z_{AB} &=\sum_\ell(B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell \sum_rS_{\ell r}\chi_r(q)\\ &=\sum_r\left[\sum_\ell(B_A{}^\ell)^*B_B{}^\ell S_{\ell r}\right]\chi_r(q). \end{aligned}

sectorの和は有限なので順序を交換できる。open側の各characterの係数と比較すると、括弧内が nABrn_{AB}{}^r に等しくなり、非負整数条件を課す。

Ishibashi条件が各sector内でcurrent gluingを満たす局所条件であるのに対し、はそれらの線形結合が実在するopen-string Hilbert空間を生むことを要求する大域的整合条件である。

3.2 SU(2)kSU(2)_kにおけるCardy解

非負整数という条件だけを眺めても、まだ係数の具体的な選び方は分からない。まず、基準境界 00 との間にsector HJ\mathcal H_J を一つだけもつ境界 JJ を構成しよう。すなわち n00r=δ0rn_{00}{}^r=\delta_{0r}、n0Jr=δJrn_{0J}{}^r=\delta_{Jr} と選ぶ。

この模型の SS は実対称でユニタリなので S−1=SS^{-1}=S、従って ∑rSℓrSrj=δℓj\sum_rS_{\ell r}S_{rj}=\delta_{\ell j} である。Cardy条件に SrjS_{rj} を掛けて rr を足せば、closed側のsector jj の係数を取り出せる。この逆変換から

∣B0j∣2=S0j,(B0j)∗BJj=SJj.|B_0{}^j|^2=S_{0j},\qquad (B_0{}^j)^*B_J{}^j=S_{Jj}.

許容範囲では S0j>0S_{0j}>0 であり、Ishibashi状態の位相を選んで B0j=S0jB_0{}^j=\sqrt{S_{0j}} とできる。第二式をこれで割れば

BJj=SJjS0j(Cardy-coefficients)\boxed{ B_J{}^j=\frac{S_{Jj}}{\sqrt{S_{0j}}} } \tag{Cardy-coefficients}

となる。基準境界との間では ∑jSJjSjr=δJr\sum_jS_{Jj}S_{jr}=\delta_{Jr} だから、選んだ一コピーのスペクトルが戻る。残る確認は、基準境界以外の二境界でも開弦の状態数が非負整数になるかである。同じ係数をCardy条件へ代入すると

nIJr=∑jSIjSJjSrjS0j=NIJrn_{IJ}{}^r=\sum_j\frac{S_{Ij}S_{Jj}S_{rj}}{S_{0j}}=N_{IJ}{}^r

となる。最後の等号は6.1のVerlinde公式であり、SS が実対称なので出力添字の複素共役も同じ値になる。closed側の結合から作った量が、chiral fusionで数えた多重度に一致し、どの組でもCardy conditionを満たす。これで二つの境界 I,JI,J を指定すれば、その間に各sectorが何コピー現れるかを計算できる。gluingだけでは自由だった結合係数が、open側の状態数と結び付いた。ここで構成したのは指定した対角模型・trivial gluing・基準境界をもつCardy解であり、annulusの一致だけで、あらゆる境界条件の分類や境界相関関数のsewingまで済んだとはしない。

基準境界との間のスペクトルからCardy係数を決める

まず 00–00 間には真空sectorだけを置き、n00r=δ0rn_{00}{}^r=\delta_{0r} と要求する。Cardy条件に S−1=SS^{-1}=S を作用させると

∑rn00rSrj=∑r,ℓ∣B0ℓ∣2SℓrSrj=∣B0j∣2=S0j.\sum_r n_{00}{}^r S_{rj} =\sum_{r,\ell}|B_0{}^\ell|^2S_{\ell r}S_{rj} =|B_0{}^j|^2=S_{0j}.

各Ishibashi状態の位相を選んで B0j=S0j>0B_0{}^j=\sqrt{S_{0j}}>0 と置ける。次に n0Jr=δJrn_{0J}{}^r=\delta_{Jr} を同様に逆変換すると

(B0j)∗BJj\displaystyle (B_0{}^j)^*B_J{}^j=
∑rn0JrSrj\displaystyle \sum_r n_{0J}{}^r S_{rj}
=
SJj\displaystyle S_{Jj}
基準境界について得た $(B_0{}^j)^*B_J{}^j=S_{Jj}$ を使う。位相を選んで $B_0{}^j=\sqrt{S_{0j}}>0$ としたため、複素共役も同じ正の数になる。

$$
\sqrt{S_{0j}}\,B_J{}^j=S_{Jj}\quad\Longrightarrow\quad B_J{}^j=\frac{S_{Jj}}{\sqrt{S_{0j}}}.
$$

許される $0\le j\le k/2$ では $0<\pi(2j+1)/(k+2)<\pi$ なので、$S_{0j}$ の正弦は正であり、この割り算ができる。

左辺の B0jB_0{}^j で割れば BJj=SJj/S0jB_J{}^j=S_{Jj}/\sqrt{S_{0j}} を得る。これはこのスペクトルを備えた境界の集合を構成する方法であり、任意のgluingを許した境界条件すべての分類を主張しているわけではない。

Cardy係数を代入し、Verlinde公式と同じ和になることを確かめる

SU(2)kSU(2)_k では SS が実数で、すべての表現が自己共役なので、これを式 に代入すると

nIJr=∑jSIjSJjSrjS0j=NIJr(Cardy-Verlinde-local)\begin{aligned} n_{IJ}{}^r &= \sum_j \frac{S_{Ij}S_{Jj}S_{rj}}{S_{0j}}\\ &=N_{IJ}{}^r \end{aligned} \tag{Cardy-Verlinde-local}

となる。第二行はVerlinde公式である。従ってopen-channelの係数は自動的にfusion multiplicityとなり、非負整数条件を満たす。

代入の際は

(BIj)∗BJjSjr=SIj∗S0jSJjS0jSjr=SIjSJjSrjS0j.(B_I{}^j)^*B_J{}^jS_{jr} =\frac{S_{Ij}^*}{\sqrt{S_{0j}}}\frac{S_{Jj}}{\sqrt{S_{0j}}}S_{jr} =\frac{S_{Ij}S_{Jj}S_{rj}}{S_{0j}}.

最後に SIj∗=SIjS_{Ij}^*=S_{Ij} と対称性 Sjr=SrjS_{jr}=S_{rj} を使った。S0j>0S_{0j}>0 なので平方根には正の実数を選べる。この模型では全表現が自己共役なため、Verlinde公式の出力添字に付く複素共役も値を変えない。

この解では、最大対称性とtrivial gluingをもつ基本的なCardy境界条件は k+1k+1 個あり、affine Lie algebraのsectorと同じように

J=0,12,…,k2J=0,\frac12,\ldots,\frac{k}{2}

でラベルされる。一般式 (4.80) とsu^(2)k\widehat{\mathfrak{su}}(2)_k のmodular SS-matrix を組み合わせると、

∥J⟩⟩=∑j=0k/2BJj∣j⟩⟩\boxed{ \|J\rangle\rangle = \sum_{j=0}^{k/2}B_J{}^j|j\rangle\rangle }

ただし

BJj=(2k+2)1/4sin⁡ ⁣(π(2j+1)(2J+1)k+2)sin⁡ ⁣(π(2j+1)k+2)1/2(6.16)B_J{}^j = \left(\frac{2}{k+2}\right)^{1/4} \frac{ \sin\!\left(\frac{\pi(2j+1)(2J+1)}{k+2}\right) }{ \sin\!\left(\frac{\pi(2j+1)}{k+2}\right)^{1/2} } \tag{6.16}

を得る。

正弦行列を代入し、式 (6.16) の四乗根を求める

A:=2/(k+2)A:=2/(k+2)、xj:=π(2j+1)/(k+2)x_j:=\pi(2j+1)/(k+2) と一時的に書けば

SJj=A1/2sin⁡((2J+1)xj),S0j=A1/2sin⁡xj.S_{Jj}=A^{1/2}\sin((2J+1)x_j),\qquad S_{0j}=A^{1/2}\sin x_j.

0<xj<π0<x_j<\pi より sin⁡xj>0\sin x_j>0 である。したがって

BJj=A1/2sin⁡((2J+1)xj)(A1/2sin⁡xj)1/2=A1/2A1/4sin⁡((2J+1)xj)(sin⁡xj)1/2=A1/4sin⁡((2J+1)xj)(sin⁡xj)1/2.\begin{aligned} B_J{}^j &=\frac{A^{1/2}\sin((2J+1)x_j)}{(A^{1/2}\sin x_j)^{1/2}}\\ &=\frac{A^{1/2}}{A^{1/4}} \frac{\sin((2J+1)x_j)}{(\sin x_j)^{1/2}}\\ &=A^{1/4}\frac{\sin((2J+1)x_j)}{(\sin x_j)^{1/2}}. \end{aligned}

これが式 である。分子の正弦は負になることがあるが、境界状態の展開係数に非負性は要求しない。非負整数性を課す対象はannulusを変換した後の重複度 nIJrn_{IJ}{}^r である。

境界がbulkへ及ぼす影響は、bulk場を一つだけ挿入した期待値にも現れる。平面では位置を選ぶものがないが、境界があるとそこからの距離が意味をもち、非自明なone-point functionが許される。状態・場対応を使えば、これは挿入したbulk状態と境界状態の重なりである。ground-state bulk場 については

⟨φj,jmn(z,zˉ)⟩J=BJjδm,n∣z−zˉ∣2hj(6.17)\boxed{ \left\langle \varphi_{j,j}^{mn}(z,\bar z) \right\rangle_J =B_J{}^j\frac{\delta^{m,n}}{|z-\bar z|^{2h_j}} } \tag{6.17}

となる。これは真空振幅で割る前のdisk one-point functionであり、⟨1⟩J=BJ0\langle\mathbf1\rangle_J=B_J{}^0 の規格化を使う。ここでも hj=j(j+1)/(k+2)h_j=j(j+1)/(k+2) である。境界に沿う並進対称性により期待値は高さ y=Im⁡zy=\operatorname{Im}z だけに依存し、全ウェイト 2hj2h_j のスケール則により (2y)−2hj=∣z−zˉ∣−2hj(2y)^{-2h_j}=|z-\bar z|^{-2h_j} になる。内部対称性は左右成分を結ぶ行列が全スピン生成子と可換であることを要求する。既約表現上のそのような行列は恒等行列の定数倍なので、双対基底では δmn\delta^{mn} が残る。最後の定数は、挿入したground stateを境界状態の jj 成分に重ねた係数 BJjB_J{}^j である。

恒等場の期待値を1にしたい場合はdisk真空振幅で割り、係数を BJj/BJ0B_J{}^j/B_J{}^0 に置き換える。次節で幾何を読み取る際も、どちらの規格化を使うかを区別する。

共形Ward恒等式と零モード対称性からone-point functionを求める

上付き添字 m,n=−j,−j+1,…,jm,n=-j,-j+1,\ldots,j は、tensor multiplet φj,j\varphi_{j,j} の左右の成分を指定する。本文で選んだ右側の双対基底では、trivial gluingに対応する不変tensorは Ujjmn=δm,nU_{jj}^{mn}=\delta^{m,n} と書ける。

上半平面を z=x+iyz=x+iy(y>0y>0)と書く。境界は実軸であり、並進 x↦x+ax\mapsto x+a を保つのでone-point functionは xx に依存しない。場の左右のウェイトはともに hjh_j である。拡大変換 z↦szz\mapsto sz(s>0s>0)による共変性は

Fmn(sy)=s−2hjFmn(y)F^{mn}(sy)=s^{-2h_j}F^{mn}(y)

だから Fmn(y)=Cmn(2y)−2hjF^{mn}(y)=C^{mn}(2y)^{-2h_j} と書ける。2y=∣z−zˉ∣2y=|z-\bar z| を選んだ定数2は、像の点 zˉ\bar z までの距離に合わせる規約で、定数係数へ吸収できる。

残る実軸を保つ特殊共形変換も確認できる。無限小変換に対するWard演算子は

z2∂z+zˉ2∂zˉ+2hjz+2hjzˉ.z^2\partial_z+\bar z^2\partial_{\bar z}+2h_jz+2h_j\bar z.

F=C(z−zˉ)−2hjF=C(z-\bar z)^{-2h_j} の形へ作用させると、微分項は −2hj(z+zˉ)F-2h_j(z+\bar z)F、残りは +2hj(z+zˉ)F+2h_j(z+\bar z)F となって相殺する。上半平面内の位相を係数へ含めれば、絶対値で書いた式と同じ距離依存である。

内部対称性については、右表現を左表現の双対として対応させた基底で C=(Cmn)C=(C^{mn}) を線形写像と読む。保存された対角 SU(2)SU(2) のWard恒等式は、任意の生成子 tat^a に対して

taC−Cta=0t^aC-Ct^a=0

となる。既約スピン jj 表現上で全生成子と可換な写像は恒等写像の定数倍なので Cmn=CjδmnC^{mn}=C_j\delta^{mn} である。この δmn\delta^{mn} は双対表現との同一視を含む規約である。左右をともに同じ磁気量子数の基底として扱ったときのsinglet係数を、そのまま δmn\delta^{mn} としているわけではない。

最後にstate–operator対応でbulk primaryを境界状態に重ねる。別sectorとの重なりは零であり、jj sectorのIshibashi状態のground-state成分を単位のintertwinerとして規格化しているため、残る係数は Cj=BJjC_j=B_J{}^j になる。したがって式 を距離因子へ掛けると式 を得る。

ここでのone-point functionは境界状態の重なりと同じ規格化である。実際、j=0j=0 の恒等場を入れると ⟨1⟩J=BJ0\langle\mathbf1\rangle_J=B_J{}^0 となる。恒等場の期待値を1に規格化したdisk相関関数を使う場合は、式 全体をdiskの真空振幅 BJ0B_J{}^0 で割る。

例えば k=2k=2 では、fusion則の 0⋆0=1⋆1=00\star0=1\star1=0 と nIJr=NIJrn_{IJ}{}^r=N_{IJ}{}^r から、境界 00 と 11 の自己スペクトルはともに H0\mathcal H_0 になる。それでもbulkへの結合は異なる。 j=12j=\frac12 を式 に入れると、境界 J=0J=0 と J=1J=1 では正弦の符号が逆になる。したがって、このbulk場の非零なone-point関数も逆符号になる。境界上の励起のスペクトルが同じでも、bulkへの結合は異なり、この二つを区別できる。

計算:境界 00 と 11 のbulk結合を比較する

6.1節の k=2k=2 の SS-matrixと式 の BJj=SJj/S0jB_J{}^j=S_{Jj}/\sqrt{S_{0j}} を使うと、

境界 JJ両端が同じ境界の開弦スペクトルBJ0B_J{}^0BJ1/2B_J{}^{1/2}
00H0\mathcal H_02−1/22^{-1/2}2−1/42^{-1/4}
11H0\mathcal H_02−1/22^{-1/2}−2−1/4-2^{-1/4}

となる。両境界を同じbulk場の規格化で比較すると、j=12j=\frac12 のone-point関数の非零な成分は符号が逆になる。disk真空振幅 BJ0B_J{}^0 で割って規格化しても、この相対符号は残る。bulk場全体の符号の取り方を変えれば二つの値はともに反転するが、両境界で逆符号という関係は保たれる。

3.3 inner automorphismでgluingを回す

左右のcurrentの対応を、固定した SU(2)SU(2) 回転だけずらすこともできる。具体的には、Lie代数の元 XX に対し Ad⁡g(X):=gXg−1\operatorname{Ad}_g(X):=gXg^{-1} と定め、gluingを

(Jna+Ωg(Jˉ−na))∥B⟩⟩Ωg=0,Ωg=Ad⁡g\left(J_n^a+\Omega_g(\bar J_{-n}^a)\right)\|B\rangle\rangle_{\Omega_g}=0, \qquad \Omega_g=\operatorname{Ad}_g

とする。この回転はcurrentの交換関係とSugawaraの二次式を保つので、同じbulk理論の中で共形対称性を保つ境界を作れる。以後この回転をtwistと呼ぶ。ここでの gg は固定した回転の群要素であり、6.1節の位置に依存する場 g(z,zˉ)g(z,\bar z) とは区別する。任意の SU(2)SU(2) 回転は、左右のcurrentを同じ大域的回転で回すことにより、その軸を第3軸に合わせられる。実際、gg を hgh−1hgh^{-1} へ対角化すると、gluingも Jn+gJˉ−ng−1=0J_n+g\bar J_{-n}g^{-1}=0 から Jn′+(hgh−1)Jˉ−n′(hgh−1)−1=0J'_n+(hgh^{-1})\bar J'_{-n}(hgh^{-1})^{-1}=0 へ変わる。これは同じ理論で軸を選び直したものである。

回転軸を第3軸へ合わせる共役変換

SU(2)SU(2) のCartan部分群は、第3軸まわりの回転からなる U(1)U(1) 部分群である。基本表現では

T={(e−iθ00eiθ) | θ∈R}T=\left\{\begin{pmatrix}e^{-i\theta}&0\\0&e^{i\theta}\end{pmatrix}\,\middle|\,\theta\in\mathbb R\right\}

と書ける。任意の g∈SU(2)g\in SU(2) はユニタリ行列なので対角化でき、行列式が1であることから二つの固有値は e−iθ,eiθe^{-i\theta},e^{i\theta} になる。固有ベクトルの位相を調整すれば、対角化する行列も h∈SU(2)h\in SU(2) に取れる。従って g′=hgh−1∈Tg'=hgh^{-1}\in T である。これは回転軸を第3軸へ合わせる操作に当たる。

この共役変換をgluingに適用するため、左右のカレントを同じ hh で回す。カレントをLie代数値でまとめて Jn,JˉnJ_n,\bar J_n と書き、Jn′=hJnh−1J'_n=hJ_nh^{-1}、Jˉn′=hJˉnh−1\bar J'_n=h\bar J_nh^{-1} とすると、

h(Jn+gJˉ−ng−1)h−1=Jn′+(hgh−1)Jˉ−n′(hgh−1)−1=0.h\left(J_n+g\bar J_{-n}g^{-1}\right)h^{-1} =J'_n+(hgh^{-1})\bar J'_{-n}(hgh^{-1})^{-1} =0.

左右に共通するこの回転は、カレント代数とエネルギー運動量テンソルを保つ大域的対称性である。従って、一つのtwistを持つ境界を調べる際には、軸を第3軸に合わせた代表を使える。任意の軸での境界状態や場の成分は、最後に逆回転して復元できる。

この代表を各表現上の零モードの作用で書くと、実パラメータ λ\lambda を用いて

g=e−iλJ03,λ∈R(6.18)g=e^{-i\lambda J_0^3}, \qquad \lambda\in\mathbb R \tag{6.18}

と置ける。λ\lambda はこのカレントの規格化に合わせた回転パラメータである。複数のtwistを同時に比較する場合、共通の回転で対角化できるのは一般には一つであり、ほかのtwistとの相対的な軸の向きは残る。

twistされた境界状態は、元のCardy状態の右sectorを回転して作れる。Rg:=e−iλJˉ03R_g:=e^{-i\lambda\bar J_0^3} と置き、

∥J⟩⟩Ωg:=Rg∥J⟩⟩=e−iλJˉ03∥J⟩⟩\boxed{ \|J\rangle\rangle_{\Omega_g} :=R_g\|J\rangle\rangle =e^{-i\lambda\bar J_0^3}\|J\rangle\rangle }

と定める。RgR_g は左カレントと可換であり、右カレントには Ωg(Jˉ−na)=RgJˉ−naRg−1\Omega_g(\bar J_{-n}^a)=R_g\bar J_{-n}^aR_g^{-1} と作用する。そのため

(Jna+Ωg(Jˉ−na))Rg∥J⟩⟩=Rg(Jna+Jˉ−na)∥J⟩⟩=0.\begin{aligned} \left(J_n^a+\Omega_g(\bar J_{-n}^a)\right)R_g\|J\rangle\rangle &=R_g\left(J_n^a+\bar J_{-n}^a\right)\|J\rangle\rangle\\ &=0. \end{aligned}

最後の等号は、元のCardy状態のgluing条件である。零モードによる回転はSugawaraのエネルギー運動量テンソルも保つので、回転後の状態も共形境界条件を満たす。

同じ状態は左sectorの回転でも表せる。元の状態に対する零モード条件 (J03+Jˉ03)∥J⟩⟩=0(J_0^3+\bar J_0^3)\|J\rangle\rangle=0 を指数化すると、

eiλJ03eiλJˉ03∥J⟩⟩=∥J⟩⟩.e^{i\lambda J_0^3}e^{i\lambda\bar J_0^3}\|J\rangle\rangle =\|J\rangle\rangle.

左右の零モードは可換なので、両辺に e−iλJˉ03e^{-i\lambda\bar J_0^3} を作用させれば

∥J⟩⟩Ωg=eiλJ03∥J⟩⟩=e−iλJˉ03∥J⟩⟩\boxed{ \|J\rangle\rangle_{\Omega_g} =e^{i\lambda J_0^3}\|J\rangle\rangle =e^{-i\lambda\bar J_0^3}\|J\rangle\rangle }

を得る。次節では、この回転した境界状態どうしの重なりから開弦スペクトルを求める。

原著の式 (6.19):Ishibashi状態の位相規約との対応

原著は各表現で、twistを実装する演算子が最高ウェイト状態を固定する規約を用いる。スピン規格化のCartan生成子を H0H_0 と書くと、H0∣j;m⟩=m∣j;m⟩H_0|j;m\rangle=m|j;m\rangle である。g=e−iϕH0g=e^{-i\phi H_0} に対し、全体位相を掛けた VΩg=eiϕqjgV_{\Omega_g}=e^{i\phi q_j}g も同じ共役作用を与える。最高ウェイト状態を固定する条件は

VΩg∣j;j⟩=eiϕ(qj−j)∣j;j⟩=∣j;j⟩V_{\Omega_g}|j;j\rangle =e^{i\phi(q_j-j)}|j;j\rangle =|j;j\rangle

なので、すべての ϕ\phi に対してこれを満たす選択は qj=jq_j=j である。一般の成分には VΩg∣j;m⟩=eiϕ(j−m)∣j;m⟩V_{\Omega_g}|j;m\rangle=e^{i\phi(j-m)}|j;m\rangle と作用する。

ノートの直交基底では J03=2H0J_0^3=\sqrt2H_0 なので、同じ回転に対して ϕ=2λ\phi=\sqrt2\lambda である。原著の位相規約によるIshibashi状態とCardy係数は

∣j⟩⟩Ωg=eiϕjRg∣j⟩⟩,BΩgJj=e−iϕjBJj(6.19)|j\rangle\rangle_{\Omega_g}=e^{i\phi j}R_g|j\rangle\rangle, \qquad B_{\Omega_gJ}{}^j=e^{-i\phi j}B_J{}^j \tag{6.19}

と書ける。従って、境界状態全体では

∑jBΩgJj∣j⟩⟩Ωg=∑jBJjRg∣j⟩⟩=Rg∥J⟩⟩\sum_j B_{\Omega_gJ}{}^j|j\rangle\rangle_{\Omega_g} =\sum_j B_J{}^jR_g|j\rangle\rangle =R_g\|J\rangle\rangle

となり、本文で直接構成したCardy状態に一致する。

4. annulusを二方向から切るとopen-string spectrumが出る

4.1 同じgluingを両端に置く場合

両端の境界 I,JI,J を指定して、開弦の励起をエネルギーごとに数えたい。基本となるのは6.1で求めた各sector Hj\mathcal H_j のcharacterである。q=e2πiτq=e^{2\pi i\tau} とすると、一つのsectorのtraceは

χj(q)=Tr⁡HjqL0−c/24\chi_j(q)=\operatorname{Tr}_{\mathcal H_j}q^{L_0-c/24}

である。sectorの内部の励起はこの式にすべて含まれている。残る仕事は、どのsectorを何コピー使うかを決めることだ。

3.2節で、同じtrivial gluingをもつCardy境界間のコピー数は nIJj=NIJjn_{IJ}{}^j=N_{IJ}{}^j と求めた。各sectorは L0L_0 の作用で保たれ、直和上のtraceは各成分のtraceの和になる。従って状態空間を

HIJ=⨁j=0k/2NIJjHj\boxed{ \mathcal H_{IJ} = \bigoplus_{j=0}^{k/2} N_{IJ}{}^j\mathcal H_j }

と分解すれば、sector jj の各コピーが同じ χj\chi_j を一つずつ寄与する。それらを足して

ZIJ(q)=Tr⁡HIJqL0−c/24=∑j=0k/2NIJj χj(q)\boxed{ Z_{IJ}(q) =\operatorname{Tr}_{\mathcal H_{IJ}}q^{L_0-c/24} =\sum_{j=0}^{k/2}N_{IJ}{}^j\,\chi_j(q) }

を得る。例えば k=2k=2 で I=J=12I=J=\tfrac12 なら、12⋆12=0⊕1\tfrac12\star\tfrac12=0\oplus1 だから H1/2,1/2=H0⊕H1\mathcal H_{1/2,1/2}=\mathcal H_0\oplus\mathcal H_1、Z1/2,1/2=χ0+χ1Z_{1/2,1/2}=\chi_0+\chi_1 となる。真空sectorだけでなく、スピン1のground stateとそのaffine descendantも数えられる。

このように、内部の励起を数えるcharacterを一度求めておけば、両端の境界を変える仕事はfusion係数による組合せに移る。トーラスの周期交換を記録した SS 行列が、Verlinde公式とCardy条件を通じて、境界条件 I,JI,J の間に存在する開弦の励起を決めている。

例:k=2k=2 のopen-string spectrum

k=2k=2 では、I≤JI\le J の組に対して次の状態空間が得られる。逆向きの組はfusionの対称性と、すべての表現が自己共役であることにより同型である。

(I,J)(I,J)HIJ\mathcal H_{IJ}
(0,0)(0,0)H0\mathcal H_0
(0,12)(0,\frac12)H1/2\mathcal H_{1/2}
(0,1)(0,1)H1\mathcal H_1
(12,12)(\frac12,\frac12)H0⊕H1\mathcal H_0\oplus\mathcal H_1
(12,1)(\frac12,1)H1/2\mathcal H_{1/2}
(1,1)(1,1)H0\mathcal H_0

例えば同じ J=12J=\frac12 境界の上には、真空sectorだけでなく j=1j=1 の境界励起も存在する。これは

12⋆12=0⊕1\frac12\star\frac12=0\oplus1

を、開弦スペクトルとして読んだものである。

先ほどのone-point関数の例と、このfusion則を照合する。k=2k=2 では 0⋆0=1⋆1=00\star0=1\star1=0 なので、両端を境界 00 に置いた場合と、両端を境界 11 に置いた場合の開弦スペクトルはともに H0\mathcal H_0 になる。一方、式 で比べたbulk場への応答は逆符号だった。さらに 00–11 間には H1\mathcal H_1 が現れるので、両端を異なる境界にした開弦からも違いが分かる。この二つのスペクトルが一致しても、ほかの境界やbulkとの関係まで一致するとは限らない。

原著のCardy公式との添字の対応

一般のCardy公式で境界を α,β\alpha,\beta、開弦sectorを ii と書くと、分配関数は

Zαβ(q)=∑iNαi+β χi(q)=∑iNiαβ χi(q)Z_{\alpha\beta}(q) =\sum_iN_{\alpha i^+}{}^\beta\,\chi_i(q) =\sum_iN_{i\alpha}{}^\beta\,\chi_i(q)

となる。二つ目の等号では、全 SU(2)SU(2) 表現の自己共役性 i+=ii^+=i とfusion積の可換性を使った。さらに SU(2)kSU(2)_k の SS 行列は実数なので、Verlinde公式の三つのラベルは対称に現れ、Niαβ=NαβiN_{i\alpha}{}^\beta=N_{\alpha\beta}{}^i である。α=I,β=J,i=j\alpha=I,\beta=J,i=j と置けば、本文で状態空間のtraceから求めた ZIJZ_{IJ} と一致する。

このcharacter分解をchannelの短距離・長距離対応として読むときは、内部RCFTの共形固有値と時空質量を区別する必要がある。open UVをclosed側の質量ゼロ交換と呼べるか

open側の短い時間は、closed側でどう見えるか?

時間方向を交換すると、open側の短い伝播はclosed側の長い伝播へ移る。長い伝播では低い共形エネルギーの状態が優勢になる。

characterに合わせたopen側の無次元時間を tt とすると、closed側では 1/t1/t になる。したがって t→0t\to0 はclosed側の長い円筒に対応する。伝播因子が高いエネルギーの状態を抑えるため、境界と結合する最も低い状態が支配する。この模型では BJ0>0B_J{}^0>0 なので、真空sectorが両境界へ結合する。

ここで測っているのは SU(2)kSU(2)_k CFTの共形エネルギーである。これを弦の時空質量と結びつけるには、時空の他の方向を表す場も含めた弦理論全体の状態条件が必要になる。この節のannulus計算だけで、支配的な交換を「質量ゼロの弦」と決めることはできない。

t⟶0⟺t~=1/t⟶∞t\longrightarrow0\quad\Longleftrightarrow\quad \widetilde t=1/t\longrightarrow\infty

参照:6.2.3 · annulusのopen–closed channel交換

次に境界ラベルを固定し、左右のcurrentをつなぐ回転を変えたときの開弦スペクトルを求める。両端の共通回転と相対回転を分けて計算する。まず共通の回転では、closed-channel overlapのbra側に逆回転、ket側に回転が入り、伝播演算子を挟んで打ち消し合う。回転は L0L_0 と可換なのでenergy gradingも保たれる。したがって両端を同じ Ωg\Omega_g でtwistしても

Z(ΩgI)(ΩgJ)(q)=∑jNIJjχj(q).Z_{(\Omega_g I)(\Omega_g J)}(q) = \sum_jN_{IJ}{}^j\chi_j(q).
両端を同じ回転で変えてもannulusが不変なことを演算子で確かめる

Rg:=e−iλJˉ03R_g:=e^{-i\lambda\bar J_0^3} と書く。Jˉ03\bar J_0^3 はHermitianなので Rg†=Rg−1R_g^\dagger=R_g^{-1}。また [Lˉ0,Jˉ03]=0[\bar L_0,\bar J_0^3]=0 であり、左sectorの L0L_0 とも可換だから、[Rg,H~c]=0[R_g,\widetilde H_c]=0 である。よって

Ωg ⁣⟨⟨I∥q~H~c∥J⟩⟩Ωg=⟨⟨I∥Rg†q~H~cRg∥J⟩⟩=⟨⟨I∥q~H~cRg−1Rg∥J⟩⟩=⟨⟨I∥q~H~c∥J⟩⟩.\begin{aligned} {}_{\Omega_g}\!\langle\langle I\| \widetilde q^{\widetilde H_c}\|J\rangle\rangle_{\Omega_g} &=\langle\langle I\|R_g^\dagger\widetilde q^{\widetilde H_c}R_g\|J\rangle\rangle\\ &=\langle\langle I\|\widetilde q^{\widetilde H_c}R_g^{-1}R_g\|J\rangle\rangle\\ &=\langle\langle I\|\widetilde q^{\widetilde H_c}\|J\rangle\rangle. \end{aligned}

片側だけを回した場合は Rg−1RgR_g^{-1}R_g の組が作れないため、次節の電荷挿入が残る。

4.2 両端のgluingが違う場合

片端が id\mathrm{id}、他端が Ωg\Omega_g なら、overlapに一つの回転演算子が残る。twistされた境界をbra側に置くと、その回転は e+iλJˉ03e^{+i\lambda\bar J_0^3} であり、gluingの Jˉ03=−J03\bar J_0^3=-J_0^3 を使えば左側の電荷挿入 e−iλJ03e^{-i\lambda J_0^3} になる。 ket側をtwistすると挿入の符号は逆になるが、各gradeは SU(2)SU(2) の有限次元表現へ分かれ、電荷 mm と −m-m を同じ重複度で持つ。このためcharged traceは λ↦−λ\lambda\mapsto-\lambda に不変であり、以下のbra側の計算を、式 のket側がtwistされた添字順へ移しても分配関数は同じになる。

a:=λ/(2π)a:=\lambda/(2\pi) と置く。電荷挿入を含むcharacterを

χj(v,τ):=Tr⁡HjqL0−c/24e−2πivJ03,q=e2πiτ\chi_j(v,\tau):=\operatorname{Tr}_{\mathcal H_j} q^{L_0-c/24}e^{-2\pi ivJ_0^3},\qquad q=e^{2\pi i\tau}

と書く。vv は電荷に掛けるパラメータで、場を挿入する位置ではない。closed側では v=av=a である。電荷も記録すると、周期交換の際に全sector共通の因子が現れる。以下の変換則を原著 §6.1.3、式 の直前にある電荷付きcharacterの表現論データとして採用する。中心項の規格化 [Jn3,Jm3]=knδn+m,0[J_n^3,J_m^3]=kn\delta_{n+m,0} では

χj(a,−1/τ)=qka2/2∑rSjrχr(aτ,τ)\chi_j(a,-1/\tau)=q^{ka^2/2}\sum_rS_{jr}\chi_r(a\tau,\tau)

となる。右辺で e−2πi(aτ)J03=q−aJ03e^{-2\pi i(a\tau)J_0^3}=q^{-aJ_0^3} と置き換えると、共通因子も同じtraceへ入れられ、指数は L0−aJ03+ka2/2−c/24L_0-aJ_0^3+ka^2/2-c/24 になる。sectorを混ぜる SS は元と同じなので、Cardy条件の和も同じ NIJrN_{IJ}{}^r を与える。

式 (6.9) のcharged-character変換を用いた式 (6.20) の導出

twisted境界をbra側に置き、open側のmodulusを τ\tau、closed側を τ~=−1/τ\widetilde\tau=-1/\tau とする。q=e2πiτq=e^{2\pi i\tau}、q~=e2πiτ~\widetilde q=e^{2\pi i\widetilde\tau} と書く。回転パラメータを a:=λ/(2π)a:=\lambda/(2\pi) と置けば、charged characterに挿入する回転は e−2πiaJ03e^{-2\pi iaJ_0^3} である。

まずclosed側の振幅を求める。境界状態をbraにすると、右sectorの回転は e+iλJˉ03e^{+i\lambda\bar J_0^3} になる。一方、Ishibashi条件の零モード部分は (J03+Jˉ03)∣j⟩⟩=0(J_0^3+\bar J_0^3)|j\rangle\rangle=0 なので、

e+iλJˉ03∣j⟩⟩=e−iλJ03∣j⟩⟩.e^{+i\lambda\bar J_0^3}|j\rangle\rangle =e^{-i\lambda J_0^3}|j\rangle\rangle.

左右の零モードは可換であり、この等式は指数を冪級数展開して各次数にgluing条件を使えば従う。伝播演算子 H~c=12(L0+Lˉ0−c/12)\widetilde H_c=\tfrac12(L_0+\bar L_0-c/12) は、左右のlevelが等しいIshibashi状態の重なりを一つのcharacterにする。従って

Zclosed=Ωg ⁣⟨⟨J∥q~H~c∥I⟩⟩=∑j(BJj)∗BIjTr⁡Hjq~L0−c/24e−2πiaJ03=∑j(BJj)∗BIjχj(a,−1/τ,0).\begin{aligned} Z^{\mathrm{closed}} &={}_{\Omega_g}\!\langle\langle J\| \widetilde q^{\widetilde H_c}\|I\rangle\rangle\\ &=\sum_j(B_J{}^j)^*B_I{}^j \operatorname{Tr}_{\mathcal H_j} \widetilde q^{L_0-c/24}e^{-2\pi iaJ_0^3}\\ &=\sum_j(B_J{}^j)^*B_I{}^j \chi_j(a,-1/\tau,0). \end{aligned}

BIj,BJjB_I{}^j,B_J{}^j は、共通のgluingを持つ元の境界状態の係数である。両境界は既にCardy conditionを満たしているので、

∑j(BJj)∗BIjSjr=nJIr\sum_j(B_J{}^j)^*B_I{}^jS_{jr}=n_{JI}{}^r

が成り立つ。右辺は元のannulusの開弦多重度である。6.1節のcharged characterの定義と変換則は

χj(z,τ,u)=e−2πikuTr⁡HjqL0−c/24e−2πizJ03,χj ⁣(zτ,−1τ,u+z22τ)=∑rSjrχr(z,τ,u).\begin{aligned} \chi_j(z,\tau,u) &=e^{-2\pi iku}\operatorname{Tr}_{\mathcal H_j} q^{L_0-c/24}e^{-2\pi izJ_0^3},\\ \chi_j\!\left(\frac z\tau,-\frac1\tau,u+\frac{z^2}{2\tau}\right) &=\sum_rS_{jr}\chi_r(z,\tau,u). \end{aligned}

J3J^3 は中心項 [Jn3,Jm3]=knδn+m,0[J_n^3,J_m^3]=kn\delta_{n+m,0} をもつ直交基底の成分であり、grade 0の電荷は 2m\sqrt2m である。変換則の二次項はこの規格化に対応する。

closed側の引数 (a,−1/τ,0)(a,-1/\tau,0) に合わせる条件は

zτ=a,u+z22τ=0⟹z=aτ,u=−a2τ2.\frac z\tau=a,\qquad u+\frac{z^2}{2\tau}=0 \quad\Longrightarrow\quad z=a\tau,\qquad u=-\frac{a^2\tau}{2}.

従って、補助変数 uu を消去した変換則は

χj(a,−1/τ,0)=qka2/2∑rSjrχr(aτ,τ,0).\boxed{ \chi_j(a,-1/\tau,0) =q^{ka^2/2}\sum_rS_{jr}\chi_r(a\tau,\tau,0). }

共通因子は e−2πiku=eπika2τ=qka2/2e^{-2\pi iku}=e^{\pi ika^2\tau}=q^{ka^2/2} から出る。同時に、電荷の挿入は e−2πi(aτ)J03=q−aJ03e^{-2\pi i(a\tau)J_0^3}=q^{-aJ_0^3} となる。[L0,J03]=0[L_0,J_0^3]=0 を使えば、この二つの効果を一つのtraceにまとめられる:

qka2/2χr(aτ,τ,0)=Tr⁡HrqL0−aJ03+ka2/2−c/24.q^{ka^2/2}\chi_r(a\tau,\tau,0) =\operatorname{Tr}_{\mathcal H_r} q^{L_0-aJ_0^3+ka^2/2-c/24}.

charged characterのmodular変換に現れる SjrS_{jr} は、電荷を挿入しない場合と同じである。従って元の境界が満たすCardy conditionをそのまま使い、

Z=∑r(∑j(BJj)∗BIjSjr)⏟nJIrTr⁡HrqL0−aJ03+ka2/2−c/24=∑rnJIrTr⁡HrqL0−aJ03+ka2/2−c/24\begin{aligned} Z &=\sum_r\underbrace{\left(\sum_j (B_J{}^j)^*B_I{}^jS_{jr}\right)}_{n_{JI}{}^r} \operatorname{Tr}_{\mathcal H_r} q^{L_0-aJ_0^3+ka^2/2-c/24}\\ &=\sum_rn_{JI}{}^r\operatorname{Tr}_{\mathcal H_r} q^{L_0-aJ_0^3+ka^2/2-c/24} \end{aligned}

を得る。相対twistは元の開弦多重度を保ち、各表現内のエネルギーを −aJ03+ka2/2-aJ_0^3+ka^2/2 だけ変える。この節で選んだ SU(2)kSU(2)_k のCardy境界では、既に nJIr=NJIr=NIJrn_{JI}{}^r=N_{JI}{}^r=N_{IJ}{}^r と求めてある。これと a=λ/(2π)a=\lambda/(2\pi) を用いれば式 になる。

元のannulusの多重度 NIJjN_{IJ}{}^j を用いると、相対twistを含む分配関数は

Z(id I)(ΩgJ)(q)=∑jNIJjTr⁡HjqL0−λ2πJ03+kλ28π2−c24(6.20)\boxed{ Z_{(\mathrm{id}\,I)(\Omega_gJ)}(q) = \sum_jN_{IJ}{}^j \operatorname{Tr}_{\mathcal H_j} q^{ L_0 -\frac{\lambda}{2\pi}J_0^3 +\frac{k\lambda^2}{8\pi^2} -\frac{c}{24} } } \tag{6.20}

を得る。線形項は、相対回転に応じて J03J_0^3 電荷ごとに生じるenergy shiftを表す。二次項は、affine代数の中心項に由来する一様なshiftである。これはopen-string traceであるが、λ≠0\lambda\ne0 では通常のspecialised character χj(τ)\chi_j(\tau) の和ではない。二つの端点で保存するcurrentの組み合わせが異なるため、open stringは相対twistを感じるからである。

例えば k=2, I=J=12k=2,\ I=J=\frac12 の開弦には、h1=12h_1=\frac12 にスピン 11 の三成分がある。式 に J03=2mJ_0^3=\sqrt2m を代入すると、共通の −c/24-c/24 を除いた各成分の共形エネルギーは

hm(λ)=12−2m2πλ+λ24π2,m=−1,0,1.h_m(\lambda)=\frac12-\frac{\sqrt2m}{2\pi}\lambda+\frac{\lambda^2}{4\pi^2},\qquad m=-1,0,1.

小さな相対twistを加えると、零で重なっていた三成分が回転軸方向の電荷に応じて分かれる。正の λ\lambda では m=1m=1 の成分は下がり、m=−1m=-1 は上がり、m=0m=0 は共通の二次項だけ移動する。両端を一緒に回した場合には分裂は生じない。

相対twistが零のとき共形エネルギー二分の一で重なる三成分が、正の相対twistで電荷に応じて上・中央・下へ分かれる。両端の共通回転では三成分は重なったままである。

式 で λ\lambda の符号を反転すると、電荷に比例する線形項の符号だけが変わる。下がる成分と上がる成分は入れ替わり、三成分に共通する二次項は同じなので、平均エネルギーの移動は変わらない。

スピン 11 の三成分のエネルギーを読む

式 に k=2k=2 と J03=2mJ_0^3=\sqrt2m を代入し、共通のCasimir項 −c/24-c/24 を除いた共形エネルギーを hm(λ)h_m(\lambda) と書くと

hm(λ)=12−2m2πλ+λ24π2,m=−1,0,1.h_m(\lambda)=\frac12-\frac{\sqrt2m}{2\pi}\lambda+\frac{\lambda^2}{4\pi^2}, \qquad m=-1,0,1.

図は λ=0\lambda=0 の三成分を小さな λ\lambda まで追ったものである。隣り合う成分の間隔は 2λ/(2π)\sqrt2\lambda/(2\pi)、三成分の平均は 12+λ2/(4π2)\frac12+\lambda^2/(4\pi^2) になる。線形項が電荷による分裂を、二次項が全体の移動を担っている。

5. boundary OPE:fusionで許し、FF で結合する

開弦スペクトルから境界場の種類が分かったので、次にそれらのOPEを求める。ここではすべての境界で共通のgluing Ω=id\Omega=\mathrm{id} を選ぶ。

5.1 境界場は開弦状態である

境界上の一点で境界条件を変えると、その点の周りの小さな半円の両端には異なる境界条件 I,JI,J が付く。この半円上の状態は、両端に I,JI,J をもつ区間上の状態、すなわち HIJ\mathcal H_{IJ} の開弦状態である。半円を縮めて点の挿入と見るのが境界の状態・場対応である。I=JI=J なら、その境界の上にある通常の局所励起を表す。

境界で左右のcurrentを結んだため、境界の励起は一組のchiral代数で整理される。bulk場の (m,n)(m,n) と異なり、ground-state境界場の磁気量子数は一つでよい。Hj\mathcal H_j のground state ∣j;m⟩|j;m\rangle に対応するVirasoro primary境界場を

ψj,mIJ(x):=Ψ ⁣(∣j;m⟩;x),NIJj=1,m=−j,…,j(6.21)\boxed{ \psi_{j,m}^{IJ}(x) := \Psi\!\left(|j;m\rangle;x\right), \qquad N_{IJ}{}^j=1, \qquad m=-j,\ldots,j } \tag{6.21}

と書く。ここで上付き IJIJ は、実軸上でその挿入点を右から左へ横切ると境界条件が II から JJ へ変わることを表す。

x1>x2x_1>x_2 に二つの場を置くと、境界条件は x>x1x>x_1 で II、x2<x<x1x_2<x<x_1 で JJ、x<x2x<x_2 で KK となる。右から左へたどると

I→ ψiIJ J→ ψjJK K.I\xrightarrow{\ \psi_i^{IJ}\ }J \xrightarrow{\ \psi_j^{JK}\ }K.

短距離で二つを融合すると、結果は境界条件を II から KK へ変える場でなければならない。x1>x2x_1>x_2 とし、ground-state multipletについて

ψi,mIJ(x1)ψj,pJK(x2)∼∑r,n(x1−x2)hr−hi−hjCijrIJK×[ijrmpn]ψr,nIK(x2)+descendants.(6.22)\boxed{ \begin{aligned} \psi_{i,m}^{IJ}(x_1)\psi_{j,p}^{JK}(x_2) \sim \sum_{r,n} &(x_1-x_2)^{h_r-h_i-h_j} C_{ijr}^{IJK}\\ &\times \begin{bmatrix} i&j&r\\ m&p&n \end{bmatrix} \psi_{r,n}^{IK}(x_2) +\text{descendants}. \end{aligned} } \tag{6.22}

座標差の指数を α\alpha とすると、拡大 x↦ρxx\mapsto\rho x に対する両辺の因子が ρ−hi−hj=ρα−hr\rho^{-h_i-h_j}=\rho^{\alpha-h_r} なので α=hr−hi−hj\alpha=h_r-h_i-h_j になる。境界場は一つのchiral代数に属するため、bulkの全ウェイト 2hj2h_j ではなく hjh_j を使う。磁気量子数への依存はbulkの場合と同じ零モードのWard恒等式からClebsch–Gordan係数となる。出力成分 nn は −r,−r+1,…,r-r,-r+1,\ldots,r を走り、n=m+pn=m+p 以外は零になる。許される rr は同時に

Nijr=1,NIKr=1N_{ij}{}^r=1, \qquad N_{IK}{}^r=1

を満たさなければならない。前者は二つの場のchiral fusion、後者は出力となる II–KK open-string sectorの存在条件である。

導出:座標の冪、磁気量子数、許される出力channel

境界を保つ拡大 x↦ρxx\mapsto\rho x(ρ>0\rho>0)のもとで、共形ウェイト hh の場には ρ−h\rho^{-h} が掛かる。式 の右辺の座標差を (x1−x2)α(x_1-x_2)^\alpha と置くと、左辺の拡大係数は ρ−hi−hj\rho^{-h_i-h_j}、右辺は ρα−hr\rho^{\alpha-h_r} である。両者を一致させれば

α−hr=−hi−hj,α=hr−hi−hj.\alpha-h_r=-h_i-h_j, \qquad \alpha=h_r-h_i-h_j.

これはprimary出力の先頭項である。出力場に微分や負モードを作用させたdescendantは共形ウェイトが上がるため、対応する座標差の次数も上がる。

磁気量子数への依存は、零モードが生成する SU(2)SU(2) の対称性から決まる。スピン ii の有限次元表現を ViV_i とし、OPEのスピン rr 部分を線形写像 C:Vi⊗Vj→VrC:V_i\otimes V_j\to V_r と見なす。零モードのWard恒等式は

traC=C(tia⊗1+1⊗tja)t_r^a C=C(t_i^a\otimes\mathbf1+\mathbf1\otimes t_j^a)

である。左辺は出力場を回転する操作、右辺は二つの入力場をそれぞれ回転してからOPEする操作である。

C(∣i,m⟩⊗∣j,p⟩)=∑nCmpn∣r,n⟩C(|i,m\rangle\otimes|j,p\rangle)=\sum_n C_{mp}^{n}|r,n\rangle と置く。t0∣j,m⟩=m∣j,m⟩t^0|j,m\rangle=m|j,m\rangle を使ったWard恒等式は

(n−m−p)Cmpn=0(n-m-p)C_{mp}^{n}=0

となるため、非零の係数は n=m+pn=m+p を満たす。さらに t+∣j,m⟩=(j−m)(j+m+1)∣j,m+1⟩t^+|j,m\rangle=\sqrt{(j-m)(j+m+1)}|j,m+1\rangle を代入すると

(r−n+1)(r+n) Cmpn−1=(i−m)(i+m+1) Cm+1,pn+(j−p)(j+p+1) Cm,p+1n.\begin{aligned} \sqrt{(r-n+1)(r+n)}\,C_{mp}^{n-1} ={}&\sqrt{(i-m)(i+m+1)}\,C_{m+1,p}^{n}\\ &+\sqrt{(j-p)(j+p+1)}\,C_{m,p+1}^{n}. \end{aligned}

範囲外の磁気量子数に対応する係数は零とする。この漸化関係と下降演算子の関係が、同じ rr の中の係数比を固定する。通常の SU(2)SU(2) のtensor積では各 rr の多重度が1なので、intertwinerは全体定数を除き一意であり、規格化したものがClebsch–Gordan係数である。その全体定数を CijrIJKC_{ijr}^{IJK} にまとめている。

最後に、零モードだけが許すchannelと、アフィン理論が許すchannelを区別する。式 では入力場が存在するために NIJi=NJKj=1N_{IJ}{}^i=N_{JK}{}^j=1 が必要であり、出力については同時に

∣i−j∣≤r≤min⁡(i+j,k−i−j),i+j+r∈Z,∣I−K∣≤r≤min⁡(I+K,k−I−K),I+K+r∈Z\begin{aligned} |i-j|&\le r\le\min(i+j,k-i-j),& i+j+r&\in\mathbb Z,\\ |I-K|&\le r\le\min(I+K,k-I-K),& I+K+r&\in\mathbb Z \end{aligned}

を満たす。第一行が二つのchiral場のfusion、第二行が II と KK の間の開弦状態の存在条件である。一方だけを満たす rr はOPE出力にならない。

5.2 なぜ係数がfusing matrixになるのか

境界場の列 I→ i J→ j KI\xrightarrow{\ i\ }J\xrightarrow{\ j\ }K は、境界を順にたどると二つの結合 I⋆i→JI\star i\to J、J⋆j→KJ\star j\to K と読める。一方、二つの場を先にOPEすると、i⋆j→ri\star j\to r、I⋆r→KI\star r\to K と読める。前者の途中にあるのは境界 JJ、後者の途中にあるのは出力場のスピン rr である。

どちらも同じ入力 I,i,jI,i,j から同じ出力 KK へ至る。違うのは途中の括り方なので、6.1の FF によって二つのconformal block基底を結べる。その対応を並べると次のようになる。

結合の順序最初の結合次の結合中間ラベル
境界を順にたどるI⋆i→JI\star i\to JJ⋆j→KJ\star j\to K境界条件 JJ
場を先にOPEするi⋆j→ri\star j\to rI⋆r→KI\star r\to K出力場のスピン rr

境界を順にたどる基底から、場を先にOPEする基底への変換を、本文のrecoupling規約で書くと

(FKIij)Jr:=FJr[ijIK]\left(F_K^{Iij}\right)_{Jr}:=F_{Jr}\begin{bmatrix}i&j\\I&K\end{bmatrix}

である。最初のtreeの存在条件は NIiJNJjK=1N_{Ii}{}^JN_{Jj}{}^K=1、二番目は NijrNIrK=1N_{ij}{}^rN_{Ir}{}^K=1。この模型のfusion許容条件は三ラベルについて対称なので、これらは前節で指定した境界場とOPE出力の存在条件に一致する。

第一添字 JJ は最初のtreeの中間辺、第二添字 rr はOPE後のtreeの中間辺を指定する。従って境界の列を与えれば、使うべき FF の行と列を読める。ただし、基底の対応を示しただけでは、任意に規格化した場のOPE係数の数値は決まらない。境界場とCVOの規格化も揃える。Cardy型のboundary sewingの解(原著 (4.91))は、この規約でOPEのスカラー係数をその基底変換成分に等しく取れることを述べる。三つの境界場を二通りにOPEした相関関数の比較は、FF による括り替えを挟むため、FF のpentagon identityへ帰着する。単に二つの係数を直接等置するのではない。

導出:境界条件の列から FJrF_{Jr} の添字を決める

まず二つの境界場

I→ i J→ j KI\xrightarrow{\ i\ }J\xrightarrow{\ j\ }K

に注目する。この境界条件の列をfusion treeとして読む方法は二つある。一つ目は、実軸に沿った順序をそのまま使うtreeである:

(I⋆i)⟶J,(J⋆j)⟶K.\boxed{ (I\star i)\longrightarrow J, \qquad (J\star j)\longrightarrow K. }

このtreeでは中間辺が境界条件 JJ である。二つ目は、二つの境界場を先にOPEするtreeである:

(i⋆j)⟶r,(I⋆r)⟶K.\boxed{ (i\star j)\longrightarrow r, \qquad (I\star r)\longrightarrow K. }

こちらの中間辺はOPE出力のchiral表現 rr である。外線を順に I,i,j,KI,i,j,K と置くと、最初のtreeから、二つの場を先に結合するtreeへの基底変換は

(FKIij)Jr:=FJr[ijIK]\left(F_K^{Iij}\right)_{Jr} := F_{Jr} \begin{bmatrix} i&j\\ I&K \end{bmatrix}

である。第一添字 JJ は「境界を順にたどるtree」の中間辺、第二添字 rr は「二つの場を先にOPEするtree」の中間辺を指定する。これで、原著の式 に FJrF_{Jr} が現れる添字上の理由が分かる。

各内部辺が許されることもfusion則で確認できる。最初のtreeは NIiJNJjK≠0N_{Ii}{}^J N_{Jj}{}^K\neq0、二番目は NijrNIrK≠0N_{ij}{}^r N_{Ir}{}^K\neq0 を要求する。SU(2)kSU(2)_k では全表現が自己共役で、三つのラベルのfusion許容条件は置換対称なので、NIiJ=NIJiN_{Ii}{}^J=N_{IJ}{}^i、NIrK=NIKrN_{Ir}{}^K=N_{IK}{}^r である。従ってこのtreeの条件は、境界場とOPE出力の存在条件に一致する。

基底変換だけでは、任意に再規格化した場のOPE係数の数値は固定されない。式 を数値的等式として使うには、次に述べるCVOと境界場の規格化を共通に選ぶ必要がある。

原著 (4.91) のCardy解に従い、境界場とCVOの規格化を対応させて選ぶ。この共通の規約では、boundary OPEのスカラー係数は

CijrIJK=FJr[ijIK]=(FKIij)Jr(6.23)\boxed{ C_{ijr}^{IJK} = F_{Jr} \begin{bmatrix} i&j\\ I&K \end{bmatrix} = \left(F_K^{Iij}\right)_{Jr} } \tag{6.23}

となる。6.1で用いた直交recoupling基底に対応する場の規格化での等式である。場を ψiIJ↦aiIJψiIJ\psi_i^{IJ}\mapsto a_i^{IJ}\psi_i^{IJ} と変えると、出力場の変更を戻すため

CijrIJK↦aiIJajJKarIKCijrIJKC_{ijr}^{IJK}\mapsto\frac{a_i^{IJ}a_j^{JK}}{a_r^{IK}}C_{ijr}^{IJK}

となる。この再規格化を区別すれば、許容channelを選ぶfusion則に加えて、それらの結合の強さを FF から計算できる。例えば k=2k=2 の列 0→ 1/2 12→ 1/2 00\xrightarrow{\ 1/2\ }\tfrac12\xrightarrow{\ 1/2\ }0 では、chiral fusionには r=0,1r=0,1 があるが、出力空間 H00=H0\mathcal H_{00}=\mathcal H_0 は r=0r=0 だけを許す。その係数には、外線 0,12,12,00,\tfrac12,\tfrac12,0、中間辺 J=12J=\tfrac12 と r=0r=0 をもつ FF の成分を使えばよい。次節で境界場を行列の基底と比較する場合も、同じように規格化を揃えて積の係数を比べる。

式 (6.23) の規格化依存性とpentagon identityによる結合則

境界場を ψiIJ↦ψi′IJ=aiIJψiIJ\psi_i^{IJ}\mapsto\psi_i^{\prime IJ}=a_i^{IJ}\psi_i^{IJ}(aiIJ≠0a_i^{IJ}\neq0)と再規格化する。座標差とClebsch–Gordan係数を省略してスカラー係数だけ追うと

ψi′IJψj′JK=aiIJajJK∑rCijrIJKψrIK=∑raiIJajJKarIKCijrIJKψr′IK.\begin{aligned} \psi_i^{\prime IJ}\psi_j^{\prime JK} &=a_i^{IJ}a_j^{JK}\sum_r C_{ijr}^{IJK}\psi_r^{IK}\\ &=\sum_r\frac{a_i^{IJ}a_j^{JK}}{a_r^{IK}}C_{ijr}^{IJK}\psi_r^{\prime IK}. \end{aligned}

従って Cijr′IJK=(aiIJajJK/arIK)CijrIJKC_{ijr}^{\prime IJK}=(a_i^{IJ}a_j^{JK}/a_r^{IK})C_{ijr}^{IJK} となる。式 の右辺と数値を比較するときには、同じ再規格化をCVOの基底にも反映する必要がある。特に、境界場の二点関数の係数を後から1に規格化すると、OPE係数も変わる。規格化に依らない内容は、二つのOPE順序から作る相関関数が一致することである。

boundary sewingの添字を、本文と同じ役割に揃えて確認する。境界条件が I,J,K,LI,J,K,L と並び、三つの場のスピンが i,j,ℓi,j,\ell である場合を取る。ここで新しい LL は三番目の場を通過した後の境界、ℓ\ell はその場のスピンである。

I→ i J→ j K→ ℓ L.I\xrightarrow{\ i\ }J\xrightarrow{\ j\ }K\xrightarrow{\ \ell\ }L.

最初に i,ji,j をスピン rr へ結合する。次に r,ℓr,\ell を結合した最終出力のスピンを pp と書く。この経路の係数は CijrIJKCrℓpIKLC_{ijr}^{IJK}C_{r\ell p}^{IKL} である。一方、j,ℓj,\ell を先にスピン ss へ結合する経路では CjℓsJKLCispIJLC_{j\ell s}^{JKL}C_{isp}^{IJL} になる。pp はここでは最終出力のスピンであり、式 の磁気量子数の役割とは異なる。

二つの経路は異なるconformal block基底を使う。前者から後者への変換は FpijℓF_p^{ij\ell} なので、後者の一つのchannel ss の係数を比較するには、前者の全 rr からの寄与を足す:

∑rCijrIJKCrℓpIKL(Fpijℓ)rs=CjℓsJKLCispIJL.\sum_r C_{ijr}^{IJK}C_{r\ell p}^{IKL} \left(F_p^{ij\ell}\right)_{rs} =C_{j\ell s}^{JKL}C_{isp}^{IJL}.

これがboundary sewing relationである。式 を四つのOPE係数にそれぞれ代入すると

∑r(FKIij)Jr(FLIrℓ)Kp(Fpijℓ)rs=(FLJjℓ)Ks(FLIis)Jp.\sum_r \left(F_K^{Iij}\right)_{Jr} \left(F_L^{Ir\ell}\right)_{Kp} \left(F_p^{ij\ell}\right)_{rs} = \left(F_L^{Jj\ell}\right)_{Ks} \left(F_L^{Iis}\right)_{Jp}.

例えば二番目の係数は、入力 r,ℓr,\ell、境界 I,K,LI,K,L、出力 pp なので、(FLIrℓ)Kp(F_L^{Ir\ell})_{Kp} になる。左辺は四つの入力表現 I,i,j,ℓI,i,j,\ell の括り方を三回の変換で変える経路、右辺は二回の変換で変える経路である。これは6.1のpentagon identityであり、式 を使った境界OPEの結合則を保証する。再規格化しても何が不変か

場の大きさを変えても、OPEの整合性は変わらないのか?

場を定数倍すればOPE係数も変わる。比較する二つのOPE順序が同じ相関関数を与えるという条件は保たれる。

例えば中間場を ara_r 倍すると、その場を作るOPE係数は 1/ar1/a_r 倍、次にその場を入力として使うOPE係数は ara_r 倍になる。二つの係数を掛けると中間場の変更は消える。外から挿入する場の定数倍は、どのOPE順序にも共通の因子として残る。

conformal blockの基底も変更すれば、基底変換を表す FF の成分は変わる。式 の C=FC=F を数値的に比べるには、境界場とCVOの規約を対応させる必要がある。規約を変えても、同じ外部の場をもつ相関関数がOPEの順序に依らないことが整合性の検査になる。

ψiIJ↦aiIJψiIJ⇒CijrIJK↦aiIJajJKarIKCijrIJK\psi_i^{IJ}\mapsto a_i^{IJ}\psi_i^{IJ}\quad\Rightarrow\quad C_{ijr}^{IJK}\mapsto\frac{a_i^{IJ}a_j^{JK}}{a_r^{IK}}C_{ijr}^{IJK}

参照:6.2.4 · 式 とboundary sewing relation

例:k=2k=2 でfusion channelとFFの役割を分ける

k=2k=2 の例へ戻ると、

ψ1/20, 1/2 ψ1/21/2, 0⟶ψ00, 0\psi_{1/2}^{0,\,1/2}\, \psi_{1/2}^{1/2,\,0} \longrightarrow \psi_0^{0,\,0}

では、chiral fusionだけなら 12⋆12=0⊕1\tfrac12\star\tfrac12=0\oplus1 なので r=0,1r=0,1 が候補になる。一方、境界条件の両端は I=K=0I=K=0 であり、0⋆0=00\star0=0 より N00r=δr0N_{00}{}^r=\delta_{r0}。二条件の共通部分は r=0r=0 だけなので、出力空間 H00=H0\mathcal H_{00}=\mathcal H_0 が候補を一つに絞る。四つのスピン 12\frac12 を含む相関関数で別のOPE順序を選ぶと、融合する二場の外側の境界がともに 12\frac12 となり、r=0,1r=0,1 の両channelが現れる。fusion係数は「どのchannelが存在するか」だけを決め、FF は「存在するchannelの基底を括り替えたとき、どの線形結合になるか」を決める。

境界の反射条件だけでは決まらなかったbulkへの結合を、annulusの二つの量子化の一致で具体化した。その結果、二境界間のsectorはfusion則で数えられ、境界場の結合は、規格化を揃えた FF 行列で扱えるようになった。

同じ自己スペクトルをもつ境界でも、bulkの一点関数への応答は異なりうる。境界を調べるには「その上に何が動くか」と「bulkへどう結合するか」の両方を使える。次節ではこの二種類のデータを使い、境界が SU(2)SU(2) のどこに広がるのか、境界場の積がどの代数になるのかを調べる。

参照

  • Recknagel–Schomerus, Boundary Conformal Field Theory and the Worldsheet Approach to D-Branes, Chapter 6, printed pp. 240–241: fusing matrixの量子 6j6j 閉形式と規格化依存性、式 –。
  • 同 pp. 241–242: bulk状態空間、分配関数、bulk primaryとOPE、式 –。
  • 同 pp. 243–245: Cardy境界状態、one-point関数、twisted gluing、境界スペクトル、boundary OPE、式 –。
  • 同 Chapter 3, printed pp. 109–112: CVO、conformal block、fusing matrixの定義、式 (3.55)–(3.63)。
  • 同 Chapter 4, printed pp. 145–146, 156–162: twisted Ishibashi状態、Cardy解、annulus spectrum、boundary sewingとCardy型boundary OPE、式 (4.53), (4.80)–(4.81), (4.91)。